新型コロナウイルスの影響で臨時休業中だった飲食店から売上金を盗んだなどとして、大阪府警が5月、窃盗容疑で大阪市西成区の無職の男(66)を逮捕した。府警によると、男は窃盗の常習者。店内の防犯カメラに写った男の顔に捜査員が気づいたことが、逮捕の決め手になった。以前は犯行に及ぶ際、マスクなどで顔を隠していた男。だが、コロナの感染拡大によりマスクが入手困難となり、やむを得ず素顔をさらすはめになったという。
慣れた手つきで
4月23日深夜、大阪市淀川区の阪急十三駅にほど近い繁華街。普段は遅くまで多くのサラリーマンなどでにぎわうが、この日はコロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言の影響で休業中の店も多く、人通りはまばらだった。そんな中、周囲をうかがうように徘徊(はいかい)していた男は、コロナの影響で早めに営業を終えた焼き肉店に目をつけた。
店舗正面の窓ガラスを慣れた手つきで割ると、無人の店内に侵入。背負っていたリュックサックから懐中電灯を取り出して店内を物色し、売上金約2万円が入った金庫を盗み出した。侵入から店を出るまでわずか3分ほどの早業だった。
直前には近くの飲食店でも同様の被害があった。手慣れた連続犯行とみられ、犯人の特定には困難も予想された。
捜査員の知る男
だが、男の身元はすんなり特定された。直前に侵入した店で、男は防犯カメラがあることに気付かず調理場に入り、素顔がアップでとらえられていたのだ。帽子はかぶっているものの、マスクもサングラスもしていなかった。
「こいつは!」。カメラの映像を確認した府警の捜査員はすぐにピンときた。
数年前、大阪府門真市の飲食店で何者かが食材を勝手に調理し、炒めものなどを作って食べるという事件があった。窃盗容疑で府警に逮捕されたのが今回カメラに写った男。窃盗捜査を担う府警捜査3課内では知られた存在だった。
府警はすぐに男の住所などを特定し、5月14日、窃盗容疑などで逮捕。平成29年9月~今年4月に発生した大阪市や兵庫県尼崎市内の飲食店を狙った窃盗事件など計24件(被害総額173万円相当)について、男の犯行と裏付けた。
「コロナが迷惑」
新型コロナの感染拡大前、男は飲食店に侵入する際はマスクをして顔を隠していた。だが、逮捕後の調べに、「コロナの影響でマスクが品薄で手に入らなかった。防犯カメラに顔が写ったのが分かり、捕まると思っていた」と語った。
男は緊急事態宣言が出された4月7日以降、大阪市や兵庫県尼崎市の4つの飲食店で現金約3万7千円を盗んだが、「コロナの影響なのか店内にある売上金が少なく、迷惑だった」と不満も漏らしたという。捜査関係者は「金欲しさにコロナの感染拡大後も普段通り窃盗を繰り返していたのだろう」と推測。「盗みをしておいて『コロナが迷惑』とはとんでもない発想だ」と憤った。
もっとも、コロナは犯罪情勢に影響を与えている。警察庁によると、今年上半期(1~6月)に全国の警察が認知した刑法犯の件数は、前年同期より5万6010件少ない30万7644件(15・4%減)だった。同庁の担当者は「コロナの感染拡大による外出自粛で街頭での犯罪が減ったことが影響したとみられる」とする。
大阪府内で同時期に認知した刑法犯の件数(暫定値)は3万3916件。前年より7374件(17・9%)減少する一方、店舗を狙った窃盗(出店荒らし)は前年より19件増加し、298件だった。
府警捜査3課の西内良貴調査官は「防犯の観点から、閉店後や休業する場合は店内に売上金などの現金を置いたままにしないでほしい」と呼びかけている。