「地獄に仏」被災地に仏壇無償提供 流失や破損「何とかしたい」 熊本の専門店

九州豪雨で被災して仏壇が流失したり、破損したりした被災者のために、熊本市西区の「輪島漆器仏壇店」が無償で仏壇を提供するサービスを始めた。既に約30基を被災地に贈っており、永田幸喜社長(58)は「仏壇は心の支え。100基までは届けたい」と意気込んでいる。
きっかけは被災者からの一本の電話だった。豪雨後の7月中旬、熊本県人吉市の住民から「水害で仏壇が水につかった」と店に相談があり、永田社長は「何とかしたい」と仏壇の提供を思いついた。「熊本地震の時には仏壇提供を思いつかなかったので、今回はやろうと決めたんです」
仏壇は小型の桐(きり)製で、高さ約35センチ、幅約20センチ、奥行き約20センチ。線香立て(灰付き)や花立て、ろうそく立ての仏具も付いてくる。これまでに人吉市のほか、同県球磨村や相良村、芦北町などに提供した。
仏壇を受け取りに来られない人には永田社長が自ら送り届け、避難所に仏壇を運んだこともあった。次第に「手伝いたい」と配達ボランティアを買って出る人まで現れ、仏壇を通じた支援の輪も広がっている。
「今年のお盆はどうなることかと思っていましたが、お陰様で手を合わせることができました」「元気が出ました。『地獄に仏』です」「先祖はもちろん、家族一同、自分の家ができたような気持ちになりました」――。永田社長の元には続々と感謝の手紙が届いている。
実際に仏壇を受け取った芦北町の女性(45)は自宅が1・4メートル浸水し、1階にあった仏壇も水没した。「位牌(いはい)だけは何とか2階に持って避難したので、先祖を供養できる仏壇の提供は本当にありがたい」と声を震わせた。
同店では仏壇修理も被災者からの依頼なら約3割安く引き受けている。永田社長は「新型コロナウイルスの感染が広がる中、家財だけでなく、仏壇まで流された人たちのために頑張りたい」と笑顔を見せた。【山本泰久】