秋田を代表する木といえばスギ。秋田県で現在産出されるスギ材は、「日本三大美林」に挙げられた天然スギではなく人の手で植えられたものだ。県内のスギ人工林面積は36万6665ヘクタールで全国一。県の森林の4割以上を占める。【古川修司】
「よくぞ、ここまで植えたものだと思う。どれだけ人と手間をかけたのか」。県南部の雄勝森林組合(湯沢市)の土田晃士森林整備課長は、事務所近くから見渡せる山々を覆うスギ林に目をやりながら話した。
スギは軟らかな肌触りで香りが良く、住宅の柱や梁(はり)として、また桶(おけ)、樽(たる)の材料などとして生活に根付いてきた。
戦中から戦後間もなくにかけて、軍需物資や薪炭、復興資材などとして全国で大量の木が切られ、高度経済成長期には住宅建材や建設用資材不足が深刻となった。そこで盛んに植えられたのが、需要が見込め生育の早いスギやマツなど。広葉樹を伐採しての「拡大造林」も進んだ。
ではなぜ秋田で、特に多くスギが植えられたのか。鷹巣農林(現秋田北鷹)高で長年林業を指導した元教諭、高坂豊実さん(75)=北秋田市=は「肥沃(ひよく)な土壌、適度な湿度と冷涼な気候が向いていた。成長は遅いが木目が細かく、高品質な材が期待できた」と指摘。「天然秋田スギのブランド力は抜群。スギを植えればもうかるという意識もあった」と明かす。
1969年度から7年にわたり、県を挙げて年間「1万ヘクタール造林運動」が展開された。ただ適地とはいえない場所にまで植えられ、高坂さんは「やりすぎだった面はある」と振り返る。
約50年がたち、当時植えたスギは伐採適期となった。一方で輸入材が増え、木材価格は下落。住宅着工数が伸びないうえ、集成材や合板が多用されるなど需要の形も変わってきた。それでも県林業木材産業課の小坂琢也主幹は「豊富な資源量を生かし、さまざまな用途に応じて安定供給できるのが秋田の強み」と強調する。
近年は温室効果ガスの吸収や土砂災害防止への山林の役割に関心が集まり、整備の財源として森林環境税が設けられた。
転機を迎えている広大な人工スギ林。小坂さんは今後について、立地条件や所有者の意向を踏まえつつ、伐採後にスギを再造林▽適切な管理をして今のスギ林を維持▽伐採後は手を加えず、時間をかけて広葉樹林に移行――などに分かれていくと説明する。
県森林組合連合会の佐藤重芳会長は「山の価値は必ず見直される。これからの山のデザインを描き、全国のモデルになるような森づくりを秋田で進めて、次世代に引き継いでいきたい」と力説した。
スギ人工林面積の上位
(1)秋田 366,665ヘクタール 43.7%
(2)宮崎 224,828ヘクタール 38.4%
(3)岩手 200,525ヘクタール 17.1%
(4)青森 198,690ヘクタール 31.4%
(5)福島 185,172ヘクタール 19.0%
(6)山形 160,872ヘクタール 24.0%
(13)宮城 133,192ヘクタール 31.9%
※2017年3月現在・林野庁まとめ