猛暑とコロナ、ダブルパンチの夏

記録的猛暑に新型コロナウイルス感染拡大とダブルパンチに見舞われた今夏。天候不順で野菜の価格が高騰して暮らしが圧迫される一方で、長引く自粛ムードの中でレジャーは縮小傾向になった。異例ずくめの夏は、どんな爪痕を残したのか。
野菜は高騰、氷は売れず
キャベツ2分の1個198円-。大阪市内のスーパーに並ぶ高値の野菜を前に、主婦(37)がため息をついた。「高くて買うのをためらいます」
近畿農政局によると、29日時点の大阪市中央卸売市場の野菜の価格は、キャベツ平年比165%▽ハクサイ同158%▽ダイコン同123%など、葉物野菜を中心に高騰。7月の長雨で日照不足となる一方、8月は猛暑となり生産量が減ったためだ。同局の担当者は「今後も平年より高い価格が続くだろう」と話す。
気象庁によると、8月の平均気温が東日本で平年より2・1度、西日本で1・7度高くなった。昭和21年の統計開始以来、東日本は最も高く、西日本はこれまで最高だった平成22年と並んだ。さらに、観測史上初めて8月は全ての日で、全国のいずれかの地点で猛暑日に当たる35度以上となった。
酷暑でも夏の風物詩である氷は需要が伸び悩んだ。
「売り上げは半減した」。老舗氷販売店「日本氷業」(大阪府吹田市)の担当者は話す。新型コロナの影響で、取引先の飲食店やバーが営業自粛や時短営業に追い込まれた。さらに、夏祭りといった屋外イベントも軒並み中止に。「いくら暑くても、業界はどこも厳しい」とこぼす。
観光需要は落ち込み
例年は多くの人が繰り出す夏休み中のレジャーも様変わりした。
第5管区海上保安本部によると、新型コロナ感染拡大防止のため、管内70カ所の公設海水浴場のうち、約6割が開設をとりやめたが、白(しら)良(ら)浜(はま)(和歌山県白浜町)など開設に踏み切ったところでは一部で密集・密接に近い様子もみられた。
ただ、外出自粛ムードによって、観光需要全体は落ち込んだ。近畿日本ツーリストによると、7~9月の旅行商品の予約状況は例年夏に人気の沖縄、北海道が前年同期比2割程度。担当者は「マイカーで行ける近場での旅行を選ぶ方が多かった」と振り返る。
この夏を、どのように過ごす人が多かったのか。
ディスカウントストア「ドン・キホーテ」などを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスによると、緊急事態宣言全面解除後の6月は「巣ごもり消費」が縮小する一方、コロナ下の熱中症対策として扇風機などの販売が伸びた。「スポーツ・レジャー用品」部門は前年同期比8・9%増で、特に、バーベキューセットなど屋外レジャー用品が売れた。7月は空気清浄機の売り上げも好調だったという。
打撃を受けた観光業界では、自宅で過ごす人向けのサービスを充実させる取り組みも。民泊仲介「エアビーアンドビー」では、お化け屋敷や花火などの夏の風物詩をオンラインで中継し、参加者がバーチャル体験できる取り組みを有料で始めた。担当者は「コロナ時代の新しいエンターテインメントのあり方を提案したい」と話している。
日本総研の若林厚仁・関西経済研究センター長の話 「消費の盛り上がりが乏しく、全体的に厳しい夏だった。秋以降は緩やかに持ち直していくとみられるが、コロナ前に戻るのは令和4年以降になるだろう。一方でコロナ下で生まれた良いサービスもあり、生き残るために今後は積極的に取り入れていく必要がある」