ここ、薬局ちゃうの? 大阪に本屋と融合の店舗 「医療と文化支える空間に」

2020年6月、大阪府豊中市に調剤薬局と本屋の機能を融合したユニークな店舗がオープンした。店名は「ページ薬局」。「人生を変える1ページと出会ってほしい」との思いを込め、読書好きの薬剤師が考案した。8月上旬、文学部出身の記者もわくわくした気持ちで店内をのぞいた。【石川将来】
豊中市蛍池東町の阪急宝塚線「蛍池駅」のホームを降りて徒歩約3分、モノレールも近くを走る線路沿いにページ薬局はある。入り口付近には「処方せん受付」の看板。見た目は普通の調剤薬局だが、自動ドアが開くと、書籍で埋まった本棚が目に飛び込んだ。
「普段は本屋に行かない人たちに偶然の出会いを届けたいと思っています」。同店を考案し、薬剤師として勤務する瀬迫貴士さん(31)が笑顔で出迎えてくれた。絵本、小説、ビジネス書、料理本……ジャンルも多様で、在庫は約1000冊。取材中、来店した高齢男性が本棚を見て「薬局ちゃうの」と戸惑う場面も見られた。
薬学部出身で、あまり活字になじみもなかった瀬迫さんが読書にのめり込み始めたのは大学生の時だという。製薬会社のインターンシップの選考に落とされたことで自己啓発本を手に取り、知見を広げたいと書店に頻繁に足を運ぶようになった。本を通じて価値観が広がる喜びを覚え、薬局運営会社に勤務していた19年夏には知人と共に「1カ月で100冊読書」に挑戦した。
本屋が街の知的インフラになっている――。薬剤師でありながら、書店の果たす役割を実感することが増え、「自分の得意分野と掛け合わせて地域を支えたい」と、ページ薬局を考案。大阪、東京、福岡といった全国の書店を訪ね歩いて書籍の配置などを研究した。本棚にはスタッフおすすめの本を紹介した手書きのポップもある。
調剤薬局では、患者から処方箋を受け取り、お薬手帳や問診書に目を通して薬を提供するが、混雑時などにはどうしても待ち時間が生じてしまう。ページ薬局を開設すると、付き添いの保護者が子どものために児童書を買うほか、患者が薬剤師と好きな作家の話題で盛り上がるなど、通常の調剤薬局では見られない新たな交流も生まれているという。
「本屋の機能があれば、処方箋がなくても街の人たちに気軽に足を運んでもらい、ついでに健康相談にも乗れる。地域の医療と文化を支える空間にしたい」と瀬迫さん。子ども時代、眼科の帰りに調剤薬局で暇を持て余していた記者は「こんな場所が地元にもあったら……」とうらやましい気持ちになった。