大阪都構想の協定書が3日、大阪市議会でも承認され、住民投票での決着に向けた火ぶたが切られた。大阪維新の会の悲願である統治機構改革の是非が、再び市民の判断に委ねられる。大阪市の存続か、新しい枠組みへの変更か-。新型コロナウイルス禍の中、抑制的だった各党の活動も、徐々にヒートアップの兆しをみせている。
3日午後3時25分ごろ、傍聴席からヤジが飛ぶ騒然とした雰囲気の中、本田リエ市議会議長(維新)が協定書の承認を宣言すると、松井一郎市長(維新代表)は表情をゆるめることなく頭を下げた。推進派の維新と公明党議員からは拍手が起こった。
閉会後、松井氏は公明の控室を訪ね、「ありがとうございます」と議員らと握手を交わした。一方、反対派の自民党市議団の北野妙子幹事長は「本当に悔しい思いでいっぱいだ」と記者団を前に深いため息。目には涙がにじんだ。
最後の論戦の場となった市議会では、特別区の財政運営や住民サービスなどをめぐり松井氏と反対議員が激しく対立したが、議論は平行線に終わった。
「都構想は問題点が多い。政令指定都市を廃止するマイナス面は計り知れない」(自民市議)。反対派は再編のデメリットを訴え、コロナ下での住民投票は「やるべきではない」としたが、松井氏は「ワクチンや治療薬が開発されていない中、大丈夫な時期は逆にいつなのか」と主張。あくまでも11月実施を目指す強気の姿勢を貫いた。
背景にあるのは、5年前とは異なる政治状況だ。
維新以外の主要政党が反対に回った前回(平成27年5月)住民投票と異なり、今回は公明が推進派に回った。新型コロナ対策で露出が増えた代表代行の吉村洋文大阪府知事の人気も高まっており、維新に有利な状況だ。衆院選と同日実施になれば、住民投票のコストやコロナ下での実施に対する批判をかわせるというメリットに加え、投票率アップで無党派層の取り込みも期待できる。
衆院解散・総選挙の可能性がささやかれる中での協定書の承認を受け、各党の活動も本格化しそうだ。8月からSNSを使った情報発信を強化してきた維新は、今月からは街宣車も使い、街頭活動にも力を入れる方針。反対派の自民や共産党もそれぞれ街頭での活動を強化し、大阪市の存続を訴える予定だ。
一方、前回から180度の方針転換を行った公明は、支援者への説明に追われている。ある公明市議は「『なんで賛成に変わったん?』という電話は多い」といい、府本部は支援者への説明用のDVDも作成。市内全24区で党員らを対象とした説明会を開き、議員が1人1人の支援者に電話をかけて説明することも検討中だ。
議会閉会後、松井氏はこう話した。
「100年に一度の感染症が発生しているわけだから、状況に合わせた活動をしたい。中身を分かってもらうことが使命だと思っている」