自民党の菅義偉官房長官(71)は2日、国会内で会見し、安倍晋三首相(65)の後継を決める党総裁選(8日告示、14日投開票)への立候補を正式表明した。昨年の新元号発表時を思い出させるブルーの勝負ネクタイを締めて臨んだ会見。次期首相就任が確実視されている「令和おじさん」は、たたき上げの苦労人であることを強調しながらも終始冷静な発言を貫いた。
野望も自信も胸の奥にしまった。「衆院議員の菅義偉でございます」。一議員であることを強調して始まったが、まるで定例の長官会見のような出馬表明となった。菅氏は約50分間、冷静かつ淡々と思いを述べた。
安倍首相の辞任表明以降、総裁選への言及は避けてきたが、対抗馬となる岸田文雄政調会長(63)、石破茂元幹事長(63)が正式表明したことを受け、ついに動いた。「一人の政治家として安倍政権を支えた者として、今なすべきことは何かを熟慮してまいりました。そして、自民党総裁選に立候補する決意を致しました。安倍政権を全身全霊で継承しながら、私の持てる力の全てを尽くす覚悟であります」。8年近くナンバー2として支えた安倍政権で進めた、アベノミクスなどの基本政策を継承する考えを明らかにした。
さらに「私の原点について」とし、来歴を語り始めた。「雪深い秋田の農家の長男に生まれ、地元で高校まで卒業しました。卒業後、農家を継ぐことに抵抗を感じ、東京に出てまいりました。町工場で働き始めましたが、すぐに厳しい現実に直面し、2年遅れて法政大学に進みました」。たたき上げの苦労人をアピールし、2世議員の多い歴代首相との違いを強調した。
首元には無言の主張も。昨年4月、新元号「令和」発表時に着用したものと色味も柄もほぼ同じ、ブルーの勝負ネクタイを締めた。午前の長官会見では締めていなかったが、周囲の勧めでクールビズを放棄。知名度を上げた「令和おじさん」として国民に語り掛ける狙いもあったとみられる。
各派閥の支持を得て「総理のイス」に限りなく近づく。派閥に属さず、派閥政治を否定してきたが、重要な局面で後押しを受ける現実について「自民党の派閥には良いところもあれば悪いところもある。派閥に推されてここにいるわけではなく、私の判断。若手議員のエネルギーが押し上げてくれている」と言い切った。
さらに「秋田の農家で育った私には地方を大切にしたい思いが脈々と流れている」と語ったのに対し「地方を大切にするなら総裁選で党員・党友投票を実施すべきだったのでは」と問われると「党は党のルールによって総裁選挙を行う。その中で全力を尽くしたい」とした。
考えていないと言い続けてきた「ポスト安倍」へと疾走する。「総理とのやりとり(後継指名)があったわけではない。熟慮を重ねた結果として判断した」。最後の最後まで静かなる表情を貫いた。(北野 新太)
◆菅 義偉(すが・よしひで)1948年12月6日、秋田県秋ノ宮村(現・湯沢市)生まれ。71歳。高校卒業後、集団就職で上京。段ボール工場での勤務後、法政大進学。会社員を経て、小此木彦三郎衆院議員の秘書に。87年、横浜市議初当選。96年、衆院初当選。2006年、第1次安倍政権で総務相として初入閣。12年からの官房長官としての在任期間は歴代最長。19年の新元号発表で「令和おじさん」のニックネームも。好物はパンケーキ。家族は妻と3男。