海水温が過去最高、「急速強化」で発達…瞬間風速85メートル予想

台風10号の接近を受け、気象庁と国土交通省は4日、合同の記者会見を開き、「これまで経験したことがない暴風雨が予想される」として、厳重な警戒を繰り返し求めた。九州では、高齢者らの避難やダムの事前放流が始まるなど緊迫感も高まっている。
「自分の命、大切な人の命を守るため、早めの対策をお願いしたい」。記者会見に臨んだ気象庁の中本能久・予報課長は強い口調で、こう訴えた。
気象庁は台風10号が発生した翌日の今月2日から連日、午前と午後の2度にわたって記者発表を行う異例の態勢をとってきた。その中で強調してきたのが、猛烈な風雨への警戒だ。
6日に予想される最大瞬間風速は沖縄と奄美で70~85メートル、九州南部で55~70メートル。鉄塔が倒壊するなどした昨年の台風15号を上回り、観測史上最大級となる可能性がある。
最大瞬間風速は60メートルを超えると、木造住宅が破損・飛散し、70メートル以上だと住宅が倒壊し、鉄骨の構造物が変形するなどとされる。気象庁は「想定を超える現象が起こることも考えられる」と危機感を募らせる。
過去最強クラスの台風接近を受け、鹿児島県では離島・十島村の高齢者や障害者、妊産婦ら約170人が、ヘリコプターで鹿児島市内に避難した。
生後10か月から9歳の子ども4人と避難した主婦(35)は「過去にも高潮被害を受けた経験があり、子どもたちの命を最優先にした」と話した。
国交省によると、九州では4日午後3時現在、鹿児島、宮崎、熊本、長崎の4県のダム21基が大雨に備えて水位を下げる事前放流を実施。内閣府は自治体に対し、新型コロナウイルス対策として、ホテルや旅館を活用するなど多くの避難所を確保するよう要請した。
海水温過去最高 台風強く

台風10号は、24時間内に急激に風速が増す「急速強化」という現象を経て発達した。専門家は「赤道域並みに高温となった海域を台風が進んだことなどが影響した」と指摘する。
台風は、海面水温が27度より高いと発達しやすい。気象庁によると、海面水温は日本の南海上で平年を1~2度上回る約30度となった。10号の進路に当たる沖縄の東海域では、8月の月平均が平年より2・1度高い30・7度を記録、統計が残る1982年以降で最高となっていた。
水温が上昇した理由は、日本の南海上にある太平洋高気圧が西側に大きく張り出し、一帯で日射量が増えて海面が温められたことだ。8月に入り、日本付近の偏西風が北側に蛇行し、気圧配置が変化したとみられる。
また、いったん台風が通過すると、海面付近の温かい海水は深い場所の冷たい海水とかき混ぜられ、海面水温が下がる。しかし、例年は7月に数個発生する台風が今年はゼロで、海面水温が下がる機会がほとんどなかったという。
京都大の竹見哲也准教授(気象学)は「長期的な海面水温上昇の背景には、じわじわと進行する地球温暖化もある。9月いっぱいは海面水温が高い状態が続く見込みで、今後発生する台風も勢力が強くなる恐れがある」としている。