税金を原資とする事業者救済措置の持続化給付金だが、一部、対象から除外されている業種がある。風営法によって開業にあたって警察への届け出が義務付けられている性風俗業だ。
その理由について、梶山弘志経済産業相は、「(性風俗業者が)社会通念上、公的資金による支援対象とすることに国民の理解が得られにくいといった考えのもとに、これまで一貫して国の補助制度の対象とされてこなかったことを踏襲し、対象外としている」と、5月11日の参院予算委員会で回答している。
特定業種を救済の対象外とすることについての賛否両論はさておき、不給付とされているはずの性風俗業者の中には、持続化給付金を“多重受給”しているケースもある。「マッサージ」や「エステ」など、非風俗業の看板を隠れみのに、性的サービスをひそかに提供している裏風俗店だ。
風俗業界専門の広告代理店に勤める男性はこう明かす。
「豊島区(東京)を中心に、いわゆる“エロマッサージ店”を4軒経営している私の知り合いの中国人女性経営者は、摘発された際に一斉に営業停止になるリスクを避けるため、それぞれの店舗をすべて違う法人にしていた。結果、4社分で計800万円の持続化給付金を申請したと言っていました」
ルールに従って営業する正規風俗店が持続化給付金の対象外となる一方、しかるべき届け出を出さずに性的サービスを提供している裏風俗店が多額の給付を受けられる現行制度は、「正直者がばかを見る」の好例と言える。
これ以外にも、持続化給付金の受給までには到底合理的とは思えない中途半端なハードルが複数設定されている。
例えば、申請書類のひとつとして税務署の収受印入りの確定申告書の控えが求められているが、これが手元にない善意の申請者に手間を強いる一方で、不正受給をたくらむ者たちに「確定申告書の控えの偽造」という手口を与えている。いずれも、国税庁が審査に協力しさえすれば、防げた話だ。
善良な市民と海賊が大海原に投げ出されているとすれば、やるべきことはありったけの浮輪を海に投げ込むことだ。しかし、現状の持続化給付金の制度は、海賊の手に浮輪がわたることを恐れるあまり、少し離れた場所に浮輪を投げ、「そこまでは自力で泳いでこい」と言っているようなもの。これでは、市民の一部は浮輪を手にする前に力尽きてしまい、水に慣れていて体力もある海賊の手に渡る浮輪の割合が増えてしまう。
政府は、今後の新型コロナ対策の支援施策運営にあたっては、この失敗を教訓にするべきだ。
■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、現地取材を行う。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年、『週刊SPA!』で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社)など。最新作『ルポ 新型コロナ詐欺』(同、写真)が早くも話題。