10分ルール、交通マナー…出前代行で続出するトラブル

新型コロナウイルスの感染拡大により利用が広まった食事宅配サービスでトラブルが相次いでいる。人気店のメニューを自宅で楽しめる気軽さが好評だが、自転車などでの配達をめぐり、交通ルールの無視、配送不備といった苦情や相談が国民生活センターに寄せられているのだ。配達員への補償が不十分だとして労働組合も結成された。副業希望者らに注目されるサービスも、“おいしい”話ばかりではなさそうだ。(佐藤祐介)
コロナ禍で急成長
「中身がこぼれていた」「配達員が家の近くまで来たのに届かず、一方的にキャンセルされた」
食事宅配サービスをめぐり、国民生活センターが受けた苦情や相談の内容だ。同センターによると、「外食・食事宅配」に関して4~8月に寄せられた相談件数は341件。昨年同時期の153件と比べて2倍以上に増えた。
相談急増の背景には、食事宅配サービスの需要増がある。
国内で同サービス「ウーバーイーツ」を手掛ける業界大手のウーバージャパンによると、3月末時点でサービスを利用したことがある飲食店は約2万軒だったが、8月中旬に約3万7千軒に増加。これまで東京や大阪、京都、兵庫など27都道府県で事業を展開し、今月15日から新たに群馬県でも始める。
ウーバーイーツは、専用アプリで注文された飲食店のメニューを配達員が店舗から受け取り、注文した利用者に自転車やバイクで届けるサービスだ。同様のサービスは出前館やディディフードなど複数の事業者が提供。配達員の登録手続きは比較的簡単で、コロナ禍で失業した人や副業希望者に人気という。
「受け取ってないのに…」
急拡大するウーバー社側と利用者の間でトラブルの元になりやすいのが、「10分ルール」だ。
効率的な配達のため、配達員が届け先に到着後、利用者と10分以上連絡が取れない場合に「キャンセル」扱いにできる、というもので、その際は利用者側の“落ち度”として、返金もされない。
ウーバーイーツのサイトによると、配達員は到着後に利用者に連絡を試み「ある程度の時間」がたつまで待機。「所定の手順を実行してもご注文品をお渡しできなかった場合、配達が正常に完了しなかったことをお知らせする通知がアプリに表示」される。連絡を試みた履歴もアプリで確認できるという。
利用者はアプリを通じて配達員の所在地をリアルタイムで確認できるが、10分ルールを知らない人も多く「受け取っていないのにキャンセルされた」との苦情も出ているという。
国民生活センターの担当者は「比較的新しいサービスで、事業者からは、配達員と利用者のやり取りが見えにくい部分もある。利用者は利用規約などをよく見て注文するかどうか判断してほしい」と話す。
同センターには、配達時の交通マナーに関する苦情も。自転車走行が禁止された高速道路のほか、一般道でスピードを出して走る配達員が目撃され、ドライバーや歩行者から「配達員の自転車とぶつかりそうになった」との声が複数届いている。
ウーバーイーツをめぐっては昨年10月、配達員らの待遇をめぐる問題も表面化している。業務中の事故をはじめ労災に対する会社側の補償が不十分だ、というものだ。
ウーバー社側は、配達中の事故で負傷した際に25万円を上限に見舞金を支払う制度を創設。一方の配達員らは労働組合「ウーバーイーツユニオン」を結成した。組合側は、「制度の中身が実態に合っているか検証が必要だ」とし、報酬に関わる配達距離の算出方法や、配達員の実績評価の妥当性についても説明を求めている。
ゲーム感覚の配達員?
こうした現状をウーバー社はどうみるか。
同社の担当者は取材に対し、トラブルが相次いでいる状況を認めた上で、専用アプリの評価機能を使い「悪質と判断される行為には、配達パートナーへの警告など必要な措置を取っている」と説明。配達員らの問題行動を防ぐことができるとしている。
岐阜大の大藪千穂教授(生活経済学)は「利用者にとって、事業者と配達員の責任の所在が明確でない段階でコロナ禍となり、サービスが先行して広がったことがトラブル続出の一因だ」との見解を示す。
また、「少しでも効率よく稼ごうと、ある種のゲーム感覚で配達員になる人もいる。配達員は自由に参入できる分、トラブルが起きた際は責任を問われる自覚を持つべきだ。それぞれの責任を明確にすることで、より便利で快適なサービスに改善される可能性がある」と話した。