天敵・菅首相の「デジタル庁」に完敗した小池都知事【小池知事「伏魔殿都政」を嗤う】

【小池知事「伏魔殿都政」を嗤う】後編

小池知事は行政手続きのデジタル化を目指す条例改正案を都議会に示した。その名も「東京デジタルファースト条例」!!という。この名称、最初は冗談かと思ったが、どうやら本当らしい。デジタルにまで小池印の「ファースト」を付ける執念深さに呆れかえったものの、実は1年半前に国で成立している「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」の通称が「デジタルファースト法」だった。

この略称のセンスもどうかと思うが、とにかく、国と東京都の間で、デジタルファーストを巡る攻防が勃発しているようである。

パクったのはどっちだと問えば、小池知事は「本家本元は私よ」と言うだろう。だが、相手は天敵の菅義偉氏だ。16日召集の臨時国会で、第99代の総理大臣に就任した「時の人」である。

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、「圧倒的に東京の問題」とかみつかれた上、「Go To トラベル」から東京を排除した菅首相に、デジタルでも先を越された感は否めない。新総裁に選出された菅首相は早速、「デジタル庁」創設に意欲を示し、新内閣のデジタル担当大臣は平井卓也・前IT担当大臣の起用が決定。デジタル庁が本格稼働することになった。

■情報通信権限の少ない東京にできることは少ない

新政権の目玉政策とはいえ、マイナンバーカードの普及率が2割にも届かない現状を考えると、前途多難と言わざるを得ないが、それは東京都も同じである。

何しろ、新型コロナ対策では、保健所のファクス行政が問題になったほどである。しかも、何か新しいことを始めようにも、情報通信分野に関する権限の少なさから、東京都にできることは最初から限られているのだ。

そんな事情を知ってか知らずか、2019年9月、鳴り物入りで都の副知事に就任したのが、元ヤフー株式会社代表取締役社長の宮坂学氏だった。IT業界での知名度は抜群で、宮坂副知事室には国内外の関係者が宮坂詣でを続けていると聞くが、就任して1年が過ぎようというのに、これといった成果を出していない。

生き馬の眼を抜くIT業界で、1年間も鳴かず飛ばずでは何とも心もとないが、どういう訳か小池知事はとっても優しいのである。

宮坂副知事率いる戦略政策情報推進本部には、都庁職員以外に、IT業界各社から気鋭の若手社員が都庁に出向して業務に当たっている。彼らの奮闘に期待したいのはヤマヤマだが、如何せん、役所の壁は高くてぶ厚い。条例ができたからといって、東京のデジタル化がホイホイ進むとは思えない。

■このままだと国際金融都市の二の舞に

失敗の前例は既にある。国際金融都市構想の迷走だ。東京をニューヨークやロンドンと並ぶ一大国際金融センターにしよう――という稀有壮大な、というか荒唐無稽と言ってもいい取組みである。

構想を掲げたものの、その中身と言えば、外部有識者の懇談会を開催したり、関係者と意見交換したり。おままごとの域を脱していない。しかも、東京都のホームページでは報道発表が「平成30年7月」でストップしたままだ。この2年間、情報発信がゼロ。これは、かなりヤバいだろう。

それでも諦めきれない小池知事は、香港がアジアの金融センターから脱落する機会をとらえて巻き返しを図ろうとしたのだが、西村経済再生担当大臣から袖にされ話も聞いてもらえず、大阪や福岡に持っていかれそうである。

小池知事は(2017年に都と金融振興での協定を結んだ)英国の金融街シティー・オブ・ロンドンのロード・メイヤー(市長)とウェブ会議を開いたが、これも「やっているフリ感」を出す演出としか思えない。

デジタル行政で小池知事は国に“惨敗”する可能性が高いが、その時、どう言い訳をするのであろうか。(終わり)

(澤章/東京都環境公社前理事長)