洋館はレーモンド設計? モンテローザ経営の会社「情報求む」 横浜・山手

横浜市中区山手町に戦前から残る洋館を、市内で老舗洋菓子店「モンテローザ」を経営する三陽物産が保全のために購入した。「日本近代建築の父」と称されるチェコの建築家、アントニン・レーモンド(1888~1976年)が設計した可能性のある貴重な建物だ。社長の山本博士さん(50)は、決め手になる物証を求めて情報提供を呼びかけている。
山本さん「壊されてしまう」
1859年の開港後、横浜山手(現在の山手町)が外国人居留地に編入されたのをきっかけに、山手地区には多くの外国人が居住した。市の報告書によると、同地区に戦前からある洋館のうち、個人所有の住宅は1992年に38件が確認できた。それが今では17件に減少している。
山本さんが買い取ったのはその一つの「山手133番館」で、土地は790平方メートル、木造2階建ての建物は延べ287平方メートル。長く日本人が所有し、戦後の接収時期を除いて外国人に貸していたが、2年ほど前に空き家になった。今年5月、売りに出ているのを知った山本さんは「このままでは開発で壊されてしまう。わが社にしかできない社会貢献をしよう」と考え、所有者との交渉を開始。8月25日に引き渡しを完了した。
専門家「設計者はレーモンドかも」
並行して133番館の歴史を調べていた山本さんに、専門家は「設計者はレーモンドかもしれない」と助言した。戦前、133番館は「ライジングサン石油会社」(旧昭和シェル石油の前身)が管理し、38~39年版の外国人人名録によると、同社の会計担当社員が住んでいた。
山下町58番のライジングサン本社や、山手町38番の社宅(現在はフェリス女学院10号館)などはいずれもレーモンドの設計で、同社とレーモンドの関係は深い。
レーモンドをうかがわせる建築上の特徴も多い。133番館の玄関や庭に面した扉、階段、収納などは、レーモンドが設計したライジングサンの建物と非常によく似ている。8月に133番館を現地調査した関東学院大の関和明名誉教授は「リビングルームのカーテンレールボックスのデザインや、庭に面した大きなスチールサッシュ(窓枠)の割り付けなどに、レーモンドの作品と共通点がある」と指摘する。
元住人の米国人女性にメールすると…
思いがけない幸運もあった。133番館で57~64年、幼少期を過ごした米国人女性(Carey Sheaさん)を、山本さんがインターネットで偶然見つけたのだ。
さっそくメールすると、女性は住み込みのばあや「タミさん」やコックとの思い出を山本さんに教えてくれた。タミさんは当時20歳ぐらいの日本人。女性の一家が133番館に引っ越してから帰国するまで働いていたという。山本さんは「タミさんが存命なら、133番館の当時の様子を聞きたい」と期待する。
133番館に関する情報を登記簿でさかのぼることができたのは36年まで。昭和初期の建築とみられるが、正確な時期や設計者は特定できていない。関さんは「状況証拠はそろっているので、後は設計図面や関連書類など当時の記録が見つかれば決定的だ。可能性はゼロではなく、手を尽くして調査を継続している」と話す。
レーモンドは、旧帝国ホテルなどを設計したフランク・ロイド・ライトの弟子。東京都武蔵野市では今年、レーモンドが手がけた富豪・赤星鉄馬の旧邸宅(34年建築)の保存に同市が乗り出した。
山本さんは、山手地区の洋館を修復した実績がある1級建築士の兼弘彰さん(50)に、133番館をできるだけ建築当初の姿に復元するよう依頼した。市の「歴史的建造物」への認定も目指している。「133番館は『残る力』を持った洋館。修復を進めながら活用方法を考えたい」【中田卓二】

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