姫路市立水族館(兵庫県姫路市西延末)が、全国の水族館で初めてナゴヤダルマガエルの自然繁殖に成功した。6月に産卵、卵がふ化し、現在は約290匹が2~4センチほどの子ガエルに成長した。数匹を常設展示している。【後藤奈緒】
ナゴヤダルマガエルは後ろ脚が短く、ずんぐりしており、背中に独立した黒い斑点があるのが特徴。水田などに生息し「ウゲゲゲ」と低い声で鳴く。環境省のレッドリストでは近い将来、野生での絶滅の危険性が高いとされる「絶滅危惧1B類」に分類され、県のリストでは緊急の保全対策、厳重な保全対策が必要な種として「Aランク」に指定されている。播磨地方ではかつて各地に生息地があったが現在は2カ所のみに減少した。
市立水族館は1990年代に播磨地方のナゴヤダルマガエルの生息調査を開始。2015年からは、館内で繁殖に取り組んできた。
これまで、冬眠前の餌の量を調節しカエルの体調管理に努めてきたが、今回はさらに育成する水槽を4倍程度に広げて繁殖を待った。水槽に入れた約20匹の雄と雌のうち、ペア1組が1000個以上の卵を産み、自然繁殖に成功した。600匹以上のオタマジャクシがふ化し、10月には約290匹が幼体まで成長した。
飼育した竹田正義技術主任(45)は「5年越しの取り組みで、卵を見つけた時はうれしくてガッツポーズをした」と振り返る。
野外調査もする竹田さんはナゴヤダルマガエルの減少の原因について「はっきりと分かっていないが、昔とは農業の形態が変わり、産卵時期に田んぼに水がないからではないか」と推測。「今回の知見を生かして個体が絶滅しないよう繁殖方法を確立し、将来的には野外で現地の人と協力しながら保全していきたい」と話している。
入館料は大人520円、小中学生は210円。火曜休館。開館時間は午前9時~午後5時。問い合わせは市立水族館(079・297・0321)へ。