相模原市長が暴力団密接交際者Aから700万円近くのお金を受け取っていた――そんな黒いカネをめぐる騒動の渦中にいる人物が毎年開催していた忘年会の席次表を独自入手。そこにはAに連なる有力国会議員の名前があった。
◆相模原市長の黒い交際疑惑!忘年会リストに記載された[政治家Xの名前]
神奈川県相模原市が黒いカネと交際疑惑に揺れている。本村賢太郎市長が暴力団密接交際者A氏から多額の政治献金を受けていた疑惑だ。『週刊新潮』が7月末に報じたことで、相模原市議会は紛糾。市長が受け取った682万4000円を返金する事態に追い込まれたのだ。
問題のA氏はどんな人物なのか? 福岡県の地元紙記者が話す。
「福岡県久留米市にある滉王という土木工事会社の会長です。その滉王は10年前まで3億円程度の売り上げでしたが、近年では20億円を超える規模にまで急成長していた。新興勢力ながら、主にJA(農協)関連の工事を請け負い、無理やり一次下請けに入って上前をハネるようなやり方で規模を拡大していったのです。
そのため、Aは地元の名士である古賀誠・元自民党幹事長を彷彿させる豪腕という人もいるほどの有名人。強引なやり口や脅し文句で、逮捕の噂が絶えない人物でもありました。
結局、今年6月に福岡県警が『暴力団構成員と密接な交際がある』と認め、自治体に通報したことで、滉王および関連企業は公共工事の入札資格を停止され、その影響からか8月には滉王が破産申請したことが明らかになりました」
一方、本村氏は民主党、希望の党などを渡り歩くなかで神奈川県議を2期経験し、衆院議員に3回当選した叩き上げだ。「足を使った選挙で地元の支持者を獲得してきた苦労人。居酒屋を営んでいた母親に育てられたという市民感覚の持ち主で、人望の厚い人として知られる」(立憲民主党議員)という。その議員時代の地盤であった相模原市長選に当選したのは’19年4月のこと。ただし、A氏とは政治家を志す前からの付き合いだった。
「叔父の本村和喜氏が福岡選出の参院議員時代に秘書を務めた関係で、叔父の支援者だったAを紹介された。それから30年近くの付き合いです」(相模原市議会議員)
◆市議会で弁明、カネの返納を表明も新たな疑惑が浮上
その本村氏はA氏について「週刊新潮の取材を受けて、初めて暴力団密接交際者だと知った」と市議会で弁明。受け取ったカネの返納を表明したが、いまだ騒動が鎮静化する兆しは見えない。新たな疑惑が浮上してきたためだ。
「本村氏が就任後、不可解な事業見直しが相次いだのです。相模原市では、リニア駅開発、米軍基地返還、そして相模大野駅周辺のA&A(麻溝台・新磯野地区整備推進事業)に伴う大規模工事を控えています。
ところが、昨年の6月に産廃問題が発覚し、急遽A&A事業の見直しが発表された。予算も当初の60億円から100億円に増額され、今年の頭には『300億円必要』とことづてがあった。
以降、『懇意の業者を使うために予算増額の着工延期を決めたのでは』という疑惑の声も上がり、市職員のモチベーションは低下している。工事中断で来年度の予算すら組めない状況で、長期的なマスタープランも立てられない。そんな自治体は全国の政令指定都市でも、相模原市だけです」
実は、本村氏には虚偽答弁の疑惑も浮上している。市議会では「年に数回程度、食事をともにすることがございましたが、費用は折半してございました」と答弁しているが、本村氏と20年来の付き合いがある後援者は「費用の折半」を否定するのだ。
「私は本村氏が衆院議員時代からA氏との会食の場に何度も同席させてもらいましたが、支払いはすべてA氏が済ませていました。A氏から『本村を市長にしたいのでよろしくお願いします』と言われ、相模原財界の関係者を何人も本村氏に繋いだりもしました。
その後、A氏はほぼ受注実績がないのに、県立体育センターの大型改修工事を一次下請けとして受注するなど、神奈川に食い込んでいった。本村氏を通じて、神奈川に足がかりを築いたのだと見ています」(本村氏は「どなたが証言されたのか存じ上げませんが、事実と異なります」と回答)
◆福岡地盤の国会議員と「永田町のタニマチ」
A氏と“交際”のあった政治家は本村氏に限らない。周辺取材を重ねるなかで、週刊SPA!は滉王が地元・久留米で開催した忘年会リストを独自入手することに成功した。平成28年度からの3年分のリストに目を通すと、元警察庁長官や福岡県議、久留米市議などの名前が並ぶ。忘年会参加者によれば、有名演歌歌手による余興が行われるなど、豪華なものだったという。
「ホテルの一間を使用して300人近い人数が参加していましたね。地元企業の重役が主な参加者で、政界関係者も少なくなかった。年々会場や面子が豪華になっていたのが印象に残ってます」
リストを見る限り、本村氏は3年連続で忘年会に参加し、来賓挨拶も行っている。そのほか、平成28年には鳩山二郎衆議院議員とその秘書が参加し、同じく来賓挨拶を行っていた。久留米が鳩山氏の選挙区(福岡6区)の中核であるためか、秘書は翌年も忘年会に参加している。
さらに、リストには福岡が生んだ「参院のドン」村上正邦氏の秘書を経て政界入りし、麻生太郎財務相の側近として頭角を現した大家敏志参院議員の名前も。大家議員の秘書が2年連続で滉王の忘年会に参加しているのだ。(両議員とも「支援者の誘いで参加したにすぎず、当然、暴力団密接交際者と認識はなかった」と回答)
平成30年には、民主党時代に自身の派閥を率いた樽床伸二元衆院議員も来賓挨拶を行っていた。本村氏が議員時代に樽床グループに所属していた関係で「暴力団密接交際者などと知らず、一度だけ参加した」(樽床氏)という。
もう一人、目をひく人物がいた。民間シンクタンク「大樹ホールディングス」会長にして、「永田町のタニマチ」の異名を取る矢島義也氏だ。野田佳彦元首相や細野豪志議員ら旧民主党系との繋がりが深いが、菅義偉首相や二階俊博幹事長ら与党の大物とも昵懇とされる人物だ。この矢島氏は平成30年から滉王の顧問を務めたとされる。
「九州の建築業界ではA氏を煙たがる人も少なくなかった。そんな事情を察してか、A氏は関東進出に本格的に注力。その後ろ盾となったのが、旧民主党ラインからの紹介で関係を深めた矢島氏だったようです」(A氏の知人)
◆最も大きな問題は停滞する相模原市政
A氏は本村氏を通じて、政界ネットワークを広げたのだ。が、最も大きな問題はA氏の影響で停滞する相模原市政にある。相模原市議会議員の中村昌治氏はこう憤る。
「暴排条例に抵触する市長の行動は看過することができません。大きな公共工事を控えている相模原市にすれば、税金が反社会勢力に流れるリスクも生じる。市民が不利益を被らないためにも税金の使い方を決定し、特定組織の利益に繋がらないよう監視することが我々の役目だと考えています」
相模原市に巣くう黒いカネと交際疑惑の根は深そうだ。
◆暴力団密接交際者A氏の関与が噂される神奈川ビジネス
●相模原共同病院建設工事疑惑
建設工事入札(’19年3月4日)において、A氏が当時衆院議員だった本村氏に口利きを依頼し、本村氏が同病院の院長に繋げたとされる。その後、A氏は昵懇の設計会社を通じ、大手ゼネコンと裏取引を結んで工事を落札させた疑いがある。
●県立体育センター改修工事受注疑惑
’20年4月に終わった同体育センターの改修工事は、設計をA氏と関係の深い設計会社、工事を大手ゼネコンが受注したが、その一次下請けとして神奈川での実績に乏しい滉王が入っていたことが明らかに。その設計会社は滉王忘年会の常連。
●相模原市A&A事業にも関与?
市内の麻溝台・新磯野第一整備地区土地区画整理事業(通称A&A事業)を、地中障害物の処理計画の問題を理由に、本村氏は市長就任直後の’19年6月に停止。市議会では「この案件にも滉王が絡んでいるのは?」と疑う声も。
◆本村相模原市長とA氏と暴力団の接点
本村市長は直接、暴力団との接点はなくとも、かつて秘書を務めた叔父の本村和喜元参院議員にはあった。
その接点は、’91年8月に和喜氏が急逝して表面化した。葬儀の場に暴力団関係の金融業者が駆けつけ、和喜氏が抱えてた借金1億6000万円の返済を強く迫ったのだ。
本村市長とA氏の関係は、和喜氏の死後に深まったとみられるが、その関係が表ざたになった騒動もある。’13年に浪人中だった本村市長はA氏とともに、全日本柔道連盟の会長と前強化委員長を背任罪で刑事告発したのだ。
東京地検は嫌疑不十分で不起訴処分としたが、当時の全柔連会長は辞任に追い込まれ、日本は国際柔道連盟理事の座を失うこととなっただけに、本村市長とともに告発したA氏の異質さが際立った。
<取材・文/栗田シメイ>