兵庫県宝塚市の市立中学校で、柔道部員の男子生徒2人が部の顧問で同中学教諭の男(50)(傷害容疑で逮捕)に技をかけられ、重軽傷を負った事件で、男は事件の1か月前に生徒との接し方についての市教育委員会の研修を受けたばかりだったことがわかった。また、副顧問の40歳代男性教諭は体罰の現場にいながら、制止せずに傍観していたことも判明。子どもを守り、適切に指導すべき教育現場が抱える問題が浮き彫りになった。(高部真一)
■アイスの数減り
体罰のきっかけはアイスキャンディーだった。市教委によると、柔道部の部室にはアイシングに使う氷用の冷凍庫があり、当時、卒業生が差し入れたアイスが入っていた。アイスの数が減っていることに気づいた男が9月25日夕、副顧問と一緒に道場で部員十数人を問いただし、1年生2人が勝手に食べたことを認めた。
腹を立てた男は、「柔道の練習」の名目で1人に技をかけ始めた。部員は「ごめんなさい」と何度も謝ったが、男は「今頃言っても許さん」と投げ技と寝技を少なくとも10回繰り返し、絞め技で失神させ、平手打ちで目を覚まさせた後も、投げ技を続けた。部員は逃げるように帰宅し、後に背骨を折る重傷だったことがわかった。
男は続けてもう1人にも暴行。嫌がる生徒に眼鏡を外させて寝技をかけ、首などに軽いけがを負わせたとされる。
■「剣幕にショック」
柔道の初心者同然の2人に対し、男は三段。力の差は明らかだが、当初、学校の聞き取りに、「いつもよりきつめの指導をした」と自身の行為を正当化していた。骨折した部員の保護者から、「体罰だ」と指摘されて初めて、認識を改めた。
副顧問の対応も問題だった。目の前で生徒が体罰を受けていたのに、制止することも、他の教諭を呼ぶこともしなかった。「顧問の
剣幕
( けんまく ) にショックを受け、傍観してしまった」と話し、当時の状況も正確には覚えていなかったという。
■教育長「強い憤り」
宝塚市の別の市立中の女子生徒が2016年12月、部活動などでいじめられて自殺した問題で、市の再調査委員会が今年6月に公表した報告書は、部活動がいじめや体罰の温床になる危険性を指摘していた。市教委は7月以降、教育改革を進めるため、再調査委の委員長を務めた春日井敏之・立命館大教授を招いた研修を実施。校長や教頭、生徒指導担当教諭らが対象で、男も生徒指導担当として8月下旬、研修を受けていたが、事件は、わずか1か月後に起きた。森恵実子教育長は「こういうことが起きないように研修をしてきたのに、強い憤りを感じる。研修を自分の問題として受け止めていなかったのではないか」と述べた。
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春日井教授の話「体罰は、子どもに恐怖心を植え付け、暴力行為を肯定する子どもを育てるマイナスの教育だ。弱者に暴力をふるってもいいということになり、いじめの一因にもなりうる。8月の研修が生かされなかったのは残念だ。何もしなかった副顧問の対応も稚拙で、生徒の命と権利より、同僚をかばうようなことを優先する風土や体質がなかったか、学校全体の問題として考える必要がある」