はじめて人類が足を踏み入れてから100年以上、いまなお南極では観測と発見が続いている。極地だからこそ学ぶことのできる教訓は、実はわたしたちの未来にとって重要なことばかり。南極で2度越冬した神沼克伊氏の新著『あしたの南極学』から、一部を抜粋・再編集してお届けします。 ■日本は南極大陸への国策必要 南半球の南極大陸およびその周辺は、北半球に住む私たち日本人を含む地球人にとって常に注意が必要な地域です。日本は文化度、経済力などを考えると、それができる力と義務があります。 日本人の南極への関心は、1957年の南極観測から始まりました。以来今日まで、南極は科学観測の場として考えられています。「科学者が望んだから始めたんだ。だから南極は科学者に任せておけばよい」という考えが、日本政府にはあるのではないかと思います。しかし、これまでも科学者だけでは対応できない問題が起きていました。 「南極条約」の締結がその始まりです。アメリカの科学者たちの熱望によってアメリカ政府が動き、外交官の活躍で、1961年に発効しました。この条約により、外交的には日本人の南極での活動も保証されるようになりました。日本ではこの条約は外務省が当時の南極観測を主導していた科学者たちの協力で縮約に力を注ぎました。 その後の南極は南極条約のもと、提起された諸問題を解決してきました。その中には南極域でのオキアミのような海洋資源や鉱物資源の保存や取り扱いの問題などがありました。 「南極アザラシ保存条約」「南極の海洋生物資源の保存に関する条約」などが採択され、発効しています。1991年には「環境保護に関する南極条約議定書」が採択され、南極の自然環境を包括的に保護する枠組みが構築されました。 日本は国内法を整備して、この議定書を1998年に批准し、発効させました。この議定書により、南緯60度以南の地域における人間の活動に対する環境影響評価の実施、鉱物資源探査活動の禁止、動植物相の保護、廃棄物の処理・管理、海洋汚染の防止、南極特別保護地区の設定などの取り決めが合意されました。また国内では「南極地域の環境保護に関する法律」が施行され、環境省が南極の環境保護に責任を持つことになりました。 国際問題ですから、これらの問題に関しては外務省が主導し、文部科学省(実際には国立極地研究所)や環境庁が協力してきました。海洋資源問題では農林水産省、鉱物資源では経済産業省も関係があります。南極は、IGY(国際地球観測年)の頃とは大きく事情が異なってきました。
はじめて人類が足を踏み入れてから100年以上、いまなお南極では観測と発見が続いている。極地だからこそ学ぶことのできる教訓は、実はわたしたちの未来にとって重要なことばかり。南極で2度越冬した神沼克伊氏の新著『あしたの南極学』から、一部を抜粋・再編集してお届けします。
■日本は南極大陸への国策必要
南半球の南極大陸およびその周辺は、北半球に住む私たち日本人を含む地球人にとって常に注意が必要な地域です。日本は文化度、経済力などを考えると、それができる力と義務があります。
日本人の南極への関心は、1957年の南極観測から始まりました。以来今日まで、南極は科学観測の場として考えられています。「科学者が望んだから始めたんだ。だから南極は科学者に任せておけばよい」という考えが、日本政府にはあるのではないかと思います。しかし、これまでも科学者だけでは対応できない問題が起きていました。
「南極条約」の締結がその始まりです。アメリカの科学者たちの熱望によってアメリカ政府が動き、外交官の活躍で、1961年に発効しました。この条約により、外交的には日本人の南極での活動も保証されるようになりました。日本ではこの条約は外務省が当時の南極観測を主導していた科学者たちの協力で縮約に力を注ぎました。
その後の南極は南極条約のもと、提起された諸問題を解決してきました。その中には南極域でのオキアミのような海洋資源や鉱物資源の保存や取り扱いの問題などがありました。
「南極アザラシ保存条約」「南極の海洋生物資源の保存に関する条約」などが採択され、発効しています。1991年には「環境保護に関する南極条約議定書」が採択され、南極の自然環境を包括的に保護する枠組みが構築されました。
日本は国内法を整備して、この議定書を1998年に批准し、発効させました。この議定書により、南緯60度以南の地域における人間の活動に対する環境影響評価の実施、鉱物資源探査活動の禁止、動植物相の保護、廃棄物の処理・管理、海洋汚染の防止、南極特別保護地区の設定などの取り決めが合意されました。また国内では「南極地域の環境保護に関する法律」が施行され、環境省が南極の環境保護に責任を持つことになりました。
国際問題ですから、これらの問題に関しては外務省が主導し、文部科学省(実際には国立極地研究所)や環境庁が協力してきました。海洋資源問題では農林水産省、鉱物資源では経済産業省も関係があります。南極は、IGY(国際地球観測年)の頃とは大きく事情が異なってきました。