大阪都構想 財政試算に不確定要素 税収増想定もコロナ影響盛り込まず

大阪府と大阪市は、市を廃止・分割しても、新たにできる4特別区とも収支不足(赤字)にはならないとする財政シミュレーションをまとめている。財政問題は有権者にとって大きな判断材料となるが、新型コロナウイルスの影響を一部しか反映していないため、反対派は「試算は楽観的すぎる」と批判している。
府・市は2025年度の特別区移行から15年間、特別区の財政運営が成り立つかを試算した。歳入と歳出の財政収支に加え、市営施設の経費節減など市政改革に伴う財政効果も対象。さらに庁舎・事務システムの改修や町名の表示板変更など241億円の特別区設置コスト、年30億円の維持費を盛り込んでも全区で収支不足にならないと結論付け、39年度には4特別区全体で計71億円の黒字になるとした。しかし、新型コロナの影響については「国からの財源措置が想定される」として反映しなかった。
頼みの大阪メトロ、赤字に
黒字を押し上げているのは、民営化された市営地下鉄の株式を市が100%保有する大阪メトロからの税収と配当だ。同社の中期経営計画を基に、配当と税収が年71億円に達すると見込み、期間中、改革効果額として盛り込んだ。しかし、同社は緊急事態宣言などの影響で、4~6月期の営業収益が前年比で42%減。本業のもうけを示す営業損益が62億円の赤字で、中期経営計画も白紙になった。
自民党や共産党は市議会で「税収や配当が今より増えるというのは、市民をだますことにつながる」と再試算を求めたが、松井一郎市長は「時期に多少のずれはあるが、業績は回復する」として見直さない考えを示した。
21年度の市税収入500億円減
さらに市は9月、21年度の市税収入が約500億円(市税の予算ベースで7%に相当)減少する見通しを公表した。当初予算編成で637億円の収支不足に陥ると見込み、不足分は財政調整基金を取り崩すことになる。
松井市長は「減収分は国から地方交付税などの財源措置がある。大阪市のままでも財政状況が悪くなるのは変わらない」と批判をかわす。一方、反対派は「経済の先行きが見通せない状況で特別区に移行したら新たなコスト負担が生まれる」と懸念を示し、真っ向から対立している。
また、府・市が描く成長戦略も、新型コロナの影響で不透明感が増している。25年4月の大阪・関西万博開幕前に、カジノを含む統合型リゾート(IR)の一部開業を目指していたが、唯一応募した米国企業などとの調整が遅れ、開業時期を1~2年延期。さらに延びる可能性もあり、「成長の核」として、万博との相乗効果を狙っていただけに影響は大きい。【野田樹】