大阪都構想の住民投票に関し、「隣接市は住民投票なしで特別区に移行できる」という投稿がツイッターで話題になっている。匿名ユーザーのほか、共産党前参院議員もイラスト付きでツイートした。
法律では確かに、一定条件下では住民投票を不要とする。一方、住民意思が反映される地元議会と府議会の承認が必要なことや、移行方法によっては住民投票を要するケースがあることも明記されている。投稿にはこうした内容は含まれておらず、ファクトチェックでは一見事実と異なることは言っていないが、重要な事実などが欠落しており、誤解の余地が大きい「ミスリード」といえる。
この内容のツイートは9月中旬以降に広まった。共産党の辰巳孝太郎前参院議員は同月15日、堺市や東大阪市など、大阪市に隣接する府内10市に特別区の範囲が広がる様子と《大阪市を廃止すると、隣接する市は住民投票なしで特別区に移行可能となります》という文字が書かれたイラストをつけ、「大阪市廃止解体は大阪市だけの問題ではないということです」と投稿した。
根拠として挙げられているのは、特別区設置の手続きを定めた大都市地域特別区設置法の第13条だ。同条では特別区に隣接する市町村が1つの特別区として参入する場合は、住民投票を省略するとしている。
一方、実際の移行には複数の手続きが求められる。同法第13条では、隣接する市町村の場合でも、府と該当自治体でつくる法定協議会の設置や協定書(設計図)の作成、府議会と地元議会での承認などは必要と規定。住民投票を要しないとはいえ、住民意思が反映される2つの議会で承認を得るまでの道のりは容易ではなく、ハードルは高いといえる。
また、市町村を2つ以上の特別区に再編して参入する場合は、その市町村の中で大阪市と同様の住民投票を行う必要がある。無条件で住民投票が不要になるというわけではない。
こうした話題は前回(平成27年5月)の大阪市民対象の住民投票でも浮上した。背景にあるのはかつて大阪維新の会が掲げた、堺市など大阪市の周辺市も含めて自治体を再編する、さらに広域的な都構想の考えだ。維新代表の松井一郎大阪市長は今月15日の会見で「まずは大阪市域で特別区ができた後、(周辺市で)議論をスタートしてもらいたい」と述べており、大阪市民以外の関心も高いテーマといえる。
堺市では昨年、「反維新」の立場だった前市長に替わって維新公認の永藤英機氏が市長に就任。永藤氏は公約で現在の任期中は都構想の議論はしないとしているが、7日の会見では仮定の話として、「法律では(1つの特別区として入る場合は)住民投票は必要ないが、堺市が特別区に入るかどうかの判断をする際には独自の条例を作って住民投票を行い、堺市民の思いを問いたい」と述べている。
(杉侑里香、小川恵理子)