北海道内では23日、新たに51人の新型コロナウイルス感染が確認された。感染者数は日別で国の緊急事態宣言期間中だった4月23日の45人を抜き過去最多に、10月は計596人となり、4月の計586人を超えて月別でも最多となった。鈴木直道知事と秋元克広・札幌市長が記者会見し、危機感を示す一方、警戒ステージの引き上げや外出自粛要請など社会経済に影響を与える対策の必要性は否定した。【山下智恵、源馬のぞみ】
道内の感染者は2681人。260人が治療中で重症者は2人。内訳では、札幌市で38人と日別で最多となったほか、釧路管内6人▽石狩管内3人▽旭川市、千歳市、後志管内、胆振管内各1人。
札幌市では18人の感染経路が不明。ススキノの接待を伴う飲食店は計70店257人に拡大した。新たに3件のクラスター(感染者集団)が発生し、グループホームでは入居者と従業員計5人▽ススキノのホストクラブの従業員5人▽ススキノのメンズパブの従業員と利用客計6人――の感染が判明した。
釧路市では、特別養護老人ホームのクラスターで新たに入居者1人の感染が判明し計10人に。発生したクラスターの2次、3次感染も出ているという。
10月からは観光喚起策「Go Toトラベル」に東京発着が追加されるなど、人の往来が増し感染も拡大。今月発生のクラスターは19件となった。鈴木知事は記者会見で「短期間で全道的に多くの事例が発生し、予断を許さない」としながらも「直ちに警戒ステージを上げる段階ではない。感染拡大と社会経済活動の両立を」と述べた。
鈴木知事は「これ以上医療機関の負担が増加すれば専門家の意見を聞いてステージを上げる」と述べ、病床数や重症者数にまだ余裕があり、経済活動に影響がある協力要請は求めない考えを示した。道保健福祉部の広島孝技監も「まだ(感染拡大を)抑えることができる」と説明した。
ただ、Go Toトラベルで道外から訪れたツアー客14人の集団感染も判明。鈴木知事は「誠に遺憾。Go Toは万全の防止対策が大前提。これまでの経験を生かし早期抑え込みに取り組みたい」と述べたが、往来の活性化は前提とした。
秋元克広市長は記者会見で、PCRセンター増設や、インフルエンザ流行期に備えた専門家会議の設置、市内の大型ビジョンでの啓発活動などを進めると表明。「市中感染が拡大すると同時に、家庭内での感染も急増している。マスクを着用せずに近距離で話すなど、感染リスクが高い行動を避けてもらいたい」と呼びかけた。
有識者「新たな対策を」
道は8月、感染状況に応じた5段階の警戒ステージを設定し、上がるごとに規制や自粛の要請などを強化する。だが、新規感染者が過去最多となっても、鈴木直道知事は、最も低い現状のステージ1の維持を強調した。
四つの数値を含む七つの指標に応じてステージが移行。ステージ1では感染予防の徹底などの注意喚起、ステージ2では体調不良時の外出自粛、テレワークなどの行動変容への協力を要請する。ステージ3以降は不要不急の外出自粛要請など、より経済的に影響の大きい要請をする。
現状では、4指標が目安に達し、四つの数値のうち、1週間の新規感染者数は212人とステージ3に相当する。ただ、道は原則、指標を全て満たさない場合はステージを移行しないとしている。
鈴木知事は23日の記者会見で「毎日の感染状況を一喜一憂してしまうが、現状の状況や対策の必要性を把握し説明するのが警戒ステージ。冷静に受け止める」と述べた。
道科学大保健医療学部の秋原志穂教授(感染症看護学)は、15日に政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が全国の繁華街と比べススキノの対策不足を指摘したことに注目。「分科会は9月上旬までのデータに基づいていたが、10月に入ってススキノでクラスターの増加が目立つ。クラスターはいかに発生を防ぐかが重要で、リスクが高い店で営業時間の短縮の要請など、新たな対策を加える段階に来ている」と指摘。「Go Toなどの影響で人の往来が増え、地方でもクラスターが出てきた。再び緊急事態宣言を出すような状況にならないよう、経済を回しつつ、適切な対策を打ち出す必要がある」と訴えた。【山下智恵、土谷純一】
現状と道の警戒ステージの指標との比較
現状(ステージ1) ステージ2
使用病床数 124床 150床
(うち重症者) (2) (15)
1週間の新規感染者 212人 107人
感染経路不明割合 38.7% 50%
療養者数 増加 増加
検査陽性率 増加 増加
新規感染者の前週との比較 増加 増加
※数値は10月23日現在