市民は住民サービス保障に疑念
新川達郎・同志社大大学院教授(地方自治)の話 大阪維新の会が都構想を提唱して以降、大阪府市は連携して政策を推進してきた。だが、この関係を恒久的に制度化しようとした際、介護保険や上下水道、消防など、住民に身近なサービスが特別区移行後も保障されるのかと疑念が膨らんだのではないか。その上で政令市の大阪市が持っていた権限と財源を捨ててまでのメリットは無いと判断したのだろう。一方、都市部でも少子高齢化に伴う財源不足は深刻化する。都構想が否決されたから現状維持でよいとは思わず、自治のあり方は議論し続けねばならない。
利害得失が見えず踏みとどまった
金井利之・東大大学院教授(行政学)の話 大阪府市が対立する「府市合わせ」を強調し改革効果をうたった大阪維新の会に住民は一定の評価をしつつ、「大阪都構想」での利害得失が見えず、生活を守る現状維持を選んだ。例えればリフォーム業者のうまい改築話に乗りかかったが、最後で実印を押すのを踏みとどまった。ただ、維新は知事と市長のポストを握っており、実質的に「大阪都政」が続く。今後も市域の福祉財源や用地などを活用し、万博やカジノなどの開発政策にまい進する。生活に余裕が無く市外へ転出もできぬ市民への施策が犠牲にならないか懸念する。
メリット一色の情報が不安を招いた
ノンフィクションライターの松本創(はじむ)さんの話 メリット一色で公正さを欠いた大阪維新の会の情報発信に、住民はかえって不安を抱いた。大阪市という基礎自治体が四つの特別区に解体されるとなると、住民は自らの生活に影響が及ぶ。維新がいくら「改革」「成長」と訴えても、デメリットを冷静に考えられたのだろう。これで都構想は2回にわたり「NO」を突きつけられた。維新人気は続くだろうが、対立をあおり分断された大阪の10年を修復していくことが必要だ。中小企業支援や商店街振興など、生活に近い政治を地道に行い成果を築くべきだ。
近隣府県と連携し西日本の拠点に
堂本暁子・前千葉県知事の話 今回の住民投票は、生活の基盤となる将来の行政制度を住民自らで選択するという重要な機会だった。人口減少の時代を迎えて自治体はどこも厳しさを増しており、時代を先取りした効率的な行政運営が求められる。特別区ではなくとも、現在の24行政区の機能を充実させて住民のニーズをくみ取りやすくするのも手だろう。都構想は否決されたが、東京一極集中是正のために地方分権の議論は今後も必要だ。兵庫や京都など近隣府県との連携も模索し、大阪は西日本の拠点となる都市づくりを進めてほしい。