全国初「県立」夜間中学が空白地帯だった四国に来春誕生

戦争や貧困、不登校などのために義務教育を十分に受けられなかった人たちが学ぶ公立の夜間中学。近年は不登校で十分学べなかった人も受け入れている。これまで四国には1校もなかったが、来春、徳島市と高知市の2カ所に全国初の県立夜間中学が誕生する。開校まで半年を切る中、徳島、高知両県の教育委員会は説明会などで夜間中学をPRするとともに、入学希望者を募集。ただ、対象者に存在が知られていない可能性もあり、ニーズの掘り起こしにも努めている。
文化や伝統も学ぶ
「やる気のある人は入学してほしい。教員は優しく丁寧に教えるので安心して」。来年4月に徳島県で開校する夜間中学「県立しらさぎ中学校」のホームページからは、校長がこう呼びかける動画を見ることができる。
しらさぎ中では、外国籍の生徒向けに、日本語指導に重点を置いたコースを設置。徳島の文化や伝統に触れる授業も計画しており、一部の教科で阿波踊りや藍染めを学び、遠足では四国霊場八十八カ所をめぐる「歩き遍路」を体験する。
校舎は「県立徳島中央高校」(徳島市)の産業教育実習棟を改修。来年3月まで約60人を募集している。県教委によると30~80代の男女計15人(11月5日現在)が入学を希望し、うち4人は中国出身。主な志望動機は、戦争の影響で学校に通えなかった、日本語を学びたい-などという。
HPでは日本語と英語、中国語、ベトナム語で情報を発信し、問い合わせも受け付けている。教頭で県教委教育創生課の籔内純一郎さんは「必要とする人に届くよう、いっそう周知に力を入れたい」と話す。今後、外国人支援団体に協力を依頼するほか、HPでの広報も続ける。
各地で開校相次ぐ
夜間中学は、昼の中学校と同じ9教科を学び、修了すれば卒業資格が得られる。高校受験も可能になる。文部科学省の調査では、今年1月現在の生徒数は1729人で、外国籍が8割を占める。戦後の混乱などによって義務教育を修了していない生徒が減る一方で、外国人の生徒が増えている。
文科省は各都道府県に少なくとも1校以上を目標としており、各地で開設に向けた動きが進む。昨年は千葉県松戸市と埼玉県川口市が設置。今年は茨城県常総市にも開校し、10都府県で34校になった。
四国4県には夜間中学が1校もないとあって、徳島、高知両県が開設の方針を打ち出して以降、学び直しを希望する人や支援者の期待は高まっていた。
ニーズ掘り起こし
一方、高知県の夜間中学は、県立高知国際中学校夜間学級として開設。校舎は現在の「県立高知江の口特別支援学校」(高知市)の建物を利用する。JR高知駅から徒歩8分で通学にも便利だ。
県教委は、入学希望者のニーズを把握し、夜間中学がどんな場所かを知ってもらおうと、昨年までの2年間、各地で「体験学校」を開催。夜間中学を紹介する映像を上映し、県教委の職員らが授業をした。延べ263人の参加があった。
募集開始に合わせて9、10月、高知市で学校説明会を開いた。11月上旬には市内の商業施設でPRイベントを企画。土日に担当者が個別相談に対応するなど、夜間中学の認知度を高めようと力を入れる。
ただ、締め切り1カ月前の4日時点の入学希望者は40人程度の募集に対して4人にとどまる。日本人の40~60代の男女で、多くは中学の勉強をやり直したい人という。高等学校課は「学力や学びの経験が異なり、夜間中学には柔軟な対応が求められる。教員の配置や学習課程を具体的に詰めていきたい」としている。

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