京大、不適正経理を把握も公表せず 霊長類研

京大霊長類研究所の設備工事をめぐり、会計検査院が新たに指摘した不正支出は約6億円にのぼった。京大は学内調査の結果を発表した6月時点で新たな不正についても把握していたが、これまで公にすることはなく、金額は大幅にふくれあがった。研究費運用をめぐる京大の問題意識の低さが指摘されている。
「当時の調査報告書は、学内規程の『競争的資金などの不正使用』に該当した契約のみを公表するものだった」。6月に約5億円の不正支出を認定した京大の調査結果について、大学担当者はこう釈明する。
文部科学省などから研究費として配分される競争的資金について京大の学内規程では、「故意または重大な過失」で資金を不適切に運用した場合を「不正使用」と定める。京大は、元所長の松沢哲郎・特別教授らが関与した入札妨害や架空取引など28件がこの「不正使用」に当たると認定。不正支出された金額を算出し、規程に基づき公表したという。
一方、会計検査院は京大が定める大学運営時の会計・財務に関する基準である会計規程に反する契約も不適正な支出と指摘。京大の調査結果に加え、新たに27件計6億2153万円の不正支出があったと公表した。京大はこれらの不正支出も「学内調査で存在は把握していた」とするものの、6月時点で公表しなかった理由を「(松沢氏ら)関係者の処分結果を受けて公表する予定だった」と述べるにとどまり、明確な理由は説明していない。
会計検査院元局長で日本大の有川博・客員教授(公共政策)は「京大と世間とでは問題意識にズレがある。研究費不正を把握していながら、公表しなかった不誠実な対応と言わざるを得ない」と批判した上で、「京大としてどのような認識で不正を認定し、公表の有無を判断したのか、改めて説明すべきだ」とした。(桑村大)