「一緒にいれば最悪私一人ですんだのに」 鹿児島5人殺害公判 被告の母が胸中語る

鹿児島県日置市の民家で2018年に家族ら男女5人が殺害された事件で、殺人と死体遺棄の罪に問われた無職、岩倉知広被告(41)の裁判員裁判の第3回公判が20日、鹿児島地裁(岩田光生裁判長)であった。岩倉被告の母親が証人出廷し「私が(被告と)一緒にいれば(殺されるのが)最悪私一人ですんだのに」などと胸中を語った。
この日、外部と地裁を音声と映像でつなぐ「ビデオリンク方式」で証人尋問に応じた母親は被告の幼少期について「子どもの頃は手が出やすいところはあったが、真面目で優しい性格だった」と証言。高校を中退して職を転々とした後、01年に陸上自衛隊に入隊したが、約1年で辞めてしまったと明かした。
同時期に一緒に暮らしていた母親に被告は「誰かに悪口を言われているのが聞こえる」と言い始めたという。05、06年ごろからは母親に暴力を振るうようになり「稼ぎが悪い」と言って殴られたと証言。被告が「尾行されている」「監視されている」などの妄想を口にしていたとも述べた。
検察側が地裁に提出した岩倉被告の妹の供述調書によると、被告は当時音に敏感になっていて、06年に幼い息子と母親方に帰省した際、風呂で息子に歌を歌っていると岩倉被告に蹴られて腰骨を骨折したという。
母親は、岩倉被告に何度も病院に行くよう勧めたが「行きたくない」と拒まれたという。暴力に耐えかねた母親は14年ごろ家を出たと証言。母親は時折声を詰まらせながら「私がそこにいて、我慢していればこういうことにならなかった」と述べ、被告に「謝罪してほしい」と語った。
弁護側は、岩倉被告が10年以上前から発症していた「妄想性障害」の影響で事件当時、心神耗弱状態にあったと主張している。
起訴状によると、岩倉被告は18年3月31日夜~4月1日朝、祖母久子さん(当時89歳)宅で、父正知さん(当時68歳)と久子さんの首を絞めて殺害し、遺体を近くの山林に遺棄。同月6日午後には、久子さん宅に2人の安否確認に来た伯父の妻孝子さん(同69歳)と孝子さんの姉坂口訓子さん(同72歳)、近所の後藤広幸さん(同47歳)の首を絞めて殺害したとされる。【白川徹】