アニメ映画化されるなど記録的ヒットを続ける人気漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」の漢字を逆さにした「滅鬼(めっき)」という地名が富山市にある。アニメ人気にあやかってユーチューバーが訪れたことでにわかに脚光を浴び、「聖地巡礼」するファンも絶えないという。突然のブームに沸き返る現地の様子を見に行こうと、富山市出身の記者が初めて足を運んでみた。
思い起こせば、記者の実家近くを走っていたバスの行き先の一つが「滅鬼」だった。しかし学生時代は読み方すら分からず、記者になってからもなじみのない土地だった。
その滅鬼地区は、富山市中心部から南に車で30分ほど走った田園地帯の真ん中にある。2005年に同市と合併するまでは八尾(やつお)町と呼ばれ、毎年9月に開催される幻想的な盆踊り「おわら風の盆」の方がはるかに知名度が高いかもしれない。
滅鬼は旧八尾町の神通川左岸にある、人口200人あまりの小さな集落。明治時代までは滅鬼村といい「角川日本地名大辞典」(角川書店)などで地名の由来を調べると「近世には大密林地帯でキツネやタヌキ、盗賊などが出没し、人を近づけないような土地だった」とある。「勇猛の士がこれら妖鬼を退治したので名づけた」(婦負(ねい)郡誌)との説もあるといい、どこか漫画との共通点も感じさせる。
そんなのどかな集落が一変したのは、10月の映画公開直後。あるユーチューバーがこの地を訪れ、「滅鬼」の名がついた交差点などを紹介すると、週末を中心に、関東などからファンが訪れるようになったという。
当然のことだが集落の中には集会所「滅鬼会館」をはじめ、橋、交差点、バス停など滅鬼と名の付く施設がいくつもある。集落を訪ねる「巡礼者」がいないか探し回ったが、平日の昼間だったためか、約1時間経っても通行人はゼロ。残念ながら鬼滅ファンに会うことはできなかった。
美しい自然が「無限」に
ただ鬼滅ブームが地域に及ぼした影響は小さくないようだ。滅鬼橋のそばにある国土交通省と富山市の学習施設「川の駅 神通川水辺プラザ」(同市城生)には、10月から東京や神奈川県などの遠方から、聖地巡礼中とおぼしきファンがたびたび訪れるようになったという。
11月に入ると、特産品コーナーに関連グッズを並べた「鬼滅コーナー」を急きょ設置。地名と似ているという理由で以前から販売していた「鬼フライ」という煎餅の売り上げが、映画公開前の約10倍に増えたそうだ。施設職員も「(人気は)不思議な感じ。アニメの影響力はすごいですね」と驚きを隠さない。
フェイスブックなどの投稿には「何もない」などといった書き込みもあるが、周囲には美しい山や川など自然が「無限」に広がるような風光明媚な地。ファンでなくてもぜひ一度訪れてみては。【青山郁子】