北陸新幹線の延伸遅れに地元憤怒「事故でもないのに」

北陸新幹線金沢-敦賀の延伸開業が令和5年春から1年半遅延する見通しが示されたことに、地元の北陸で憤りの声が広がっている。突然、工期遅延が浮上したことに不信感を募らせただけではなく、延伸を見越して動き出していた地域経済に深刻なダメージとなりかねないからだ。
急に遅れは生じない
「突発的な事故があれば別だが、急に遅れは生じない」
福井県の杉本達治知事は11月12日、県庁を訪れた国土交通省の上原淳鉄道局長と鉄道建設・運輸施設整備支援機構の北村隆志理事長と面談した際、北陸新幹線の延伸工事が遅れている現状への疑義を伝えた。
前日の11日、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)会合で、延伸開業は令和5年春から1年半遅れること、追加の建設費が2880億円かかる見通しであることが初めて明らかにされたのだ。
県側の怒りも無理はなかった。北陸新幹線の金沢-敦賀延伸の建設費は当初1兆1858億円。昨年すでに2263億円の増額が決まっていたが、その理由は令和5年春開業に間に合わせるためだったからだ。建設費の一部は地元自治体も負担する。さらなる増額に、杉本知事は「(工事の遅れは)以前から分かっていたのではないか、それを隠しながらやってきたのではないかと疑っている」と批判した。
問い合わせても「大丈夫」
機構によると、工期が大幅に遅れている工事のひとつが石川、福井県境に整備されている加賀トンネル。トンネル底部にひび割れが生じ、計約1キロの区間に固定ボルト約1400本を打ち込む追加工事が必要という。もう一つが敦賀駅の建設工事。上部に新幹線、下部に在来線が乗り入れるホームを設け乗り継ぎやすい構造にしたため、大型化。その分、熟練した技術が求められたが、資機材や作業員の確保が難しく工期に遅れをきたした。
地元が不信感を強めているのは、工事遅延の情報が共有できていなかったことにある。杉本知事は「春先から『工事が遅れているのではないか』と問い合わせてきたが、機構は『大丈夫』と回答していた。いくら聞いても(遅れを)表に出してこなかった」と指摘する。
北村理事長は、面談後の取材に「工事には変動要素があり、それを解決していくのが私たちの役割。今回もクリアできるという思いだったが、認識が甘かった」と陳謝した。
在来線の将来に影
開業の遅れによる影響は計り知れない。福井駅前では再開発事業で、高級ホテルも入る複合施設建設に向けた解体工事が始まったばかり。県内では景勝地の東尋坊(坂井市)、県立恐竜博物館(勝山市)など整備計画が動き出していて、新幹線を見据えた計画にくるいが生じかねない。
並行在来線の経営状態にも懸念が出ている。
新幹線を運営するJRの経営負担を軽減するため、新幹線と並行して走る在来線は地元自治体などが出資する第三セクターに経営譲渡することになっている。JR北陸本線の石川県境から敦賀駅までの区間が三セクの運営になる福井では昨年8月、並行在来線の運営に向けた準備会社を立ち上げた。
新幹線の開業が遅延すれば在来線の経営譲渡の時期にも影響する。準備会社の西村利光社長は「遅れた分だけ、無収入の期間が長引いてしまう」と窮地を訴える。もともと並行在来線の収支は開業初年度が8億2千万円の赤字という予測。沿線の人口減少を背景に利用客が伸び悩み、開業10年後には15億円の赤字に膨らむ見通しだった。経営譲渡が遅れるほど、運行路線がないまま運営に必要な人員を抱えて収入もない状態が続く。追加出資を必要とするだけでなく、赤字解消に向けた施策を実行する経営体力すら奪われかねない。
西村社長は「在来線は1日平均1万9千人が利用する地域の貴重な足だ。遅れる影響をなるべく少なくしなければいけない」と強調した。