【郷原信郎「これだけは言いたい!」】
昨年11月「桜を見る会」前夜祭に関して、会費を補填していた公選法違反の疑い、その収支の記載に関する政治資金規正法違反の疑いなどについて、安倍晋三前首相が行っていた説明・国会答弁には重大な疑問があった。
当時、私は、違法行為を否定する安倍首相の説明が「詰んでいる」と表現し、説明不能に陥っていると指摘した。
約1年を経過した今年11月23日、読売新聞、NHKなどの報道により、この問題で、東京地検特捜部が関係先を捜査していること、前首相側が会費を補填していたことが明らかになった。
前首相側が、会費補填の事実を認めた上、「秘書が虚偽説明をしていた」という、「子供じみた言い訳」をしていることに関して、私は、「戦後最長の第2次安倍政権」は「嘘に嘘を重ねただけの『虚構内閣』だったのではないか」と批判した。
こうした中、SNS上で、「日頃検察とメディアのもたれあいを批判してやまない郷原さんですら、このリークの不自然さを疑わないとは。対象によって態度を変えているとしか思えない」との問題の指摘があった。
確かに、私は、検察と司法メディアとの癒着、検察が捜査情報をリークし世論誘導を行って強引に捜査を進めていくやり方を批判してきた。その問題をテーマとする推理小説「司法記者」(講談社文庫)はWOWOWでドラマ化もされた(「トクソウ」)。今回の「桜を見る会」前夜祭の会費補填の事実も、同様の構図で明らかになったことは確かだ。
しかし、それについて、“これだけは言いたい!”。今回の会費補填の事実は、首相であった安倍氏が、国会等で追及を受けた当時、当然に、自ら明らかにすべき事実だった。ところが、国会の代表質問で会費補填の事実を否定し、「私の事務所に確認を行った結果、ホテル側との相談過程においてホテル側から明細書等の発行はなく、加えて、ホテル側としては営業の秘密に関わることから公開を前提とした資料提供には応じかねることであったと報告を受けております」などと答弁して、追及をかわしていた。
安倍事務所側が本気で要請すれば、ホテル側が「営業の秘密」を理由に資料提供を拒否するなどということはあり得ないのであり、資料提供をしないようホテル側に「口封じ」をしていたことは明らかだ。
要するに、首相として当然に説明責任を果たすべきことを、虚言を弄して説明を拒否するという「あってはならないこと」が起きていて、それによって隠されていた事実が、検察捜査とリークによって明らかになったのだ。そこに、これまでの事件での検察リークとの大きな違いがある。
安倍前首相の「桜を見る会」前夜祭問題では、あえてその点は指摘しなかったが、もちろん、検察と司法メディアの癒着の問題は、これからも追及していく。
(郷原信郎/弁護士)