【ニュースの核心】「衆院解散・総選挙」は来年秋か 菅政権、コロナ対策・携帯料金値下げなど全力姿勢 任期満了選挙も

年の瀬が近づいてきた。そんななか、永田町の最大関心事といえば、多くの国民が気をもむ新型コロナウイルスでも、景気の先行きでもない。「衆院解散・総選挙の行方」である。
菅義偉首相はいつ、衆院解散を決断するのだろうか。
私は「早ければ早いほどいい」と思っていた。安倍晋三前首相の突然の退陣を受けて誕生した菅政権は、選挙の洗礼を受けていないからだ。自民党という政権政党が、所属する国会議員と都道府県連代表らに投票権を振り分けて実施した「内輪の選挙」で菅首相を選んだにすぎない。
日本は国会の多数派が内閣総理大臣を選ぶ議院内閣制を採用しているので、それで法的な問題が生じるわけではないが、そうであっても、国民が選挙で民意を示す機会があったほうが望ましいのは、言うまでもない。菅政権にとっても、政権を担う民主主義的な正統性が高まる。
だが、現実には解散・総選挙は来年秋まで遠のきつつある。菅首相の自民党総裁任期は来年9月、衆院議員の任期は同10月までなので、事実上、任期満了選挙になる公算が大きくなっているのだ。
少し前まで、「来年1月の通常国会冒頭で解散」説が有力な選択肢とみられていたが、これは2つの理由で消えた。
1つは新型コロナの感染拡大である。新規感染者は全国で増え続け、重症者数は過去最多を更新した。そんな状況では、候補者が選挙運動を展開し、国民に投票を呼びかけるどころではない。
もう1つは、安倍前首相の「桜を見る会・前夜祭」問題だ。安倍氏は国会で否定していたが、公設第1秘書らが前夜祭費用の一部負担を認めた、という。全容は明らかになっていないが、菅政権にも打撃である。政権が不利な状況では、解散しにくい。
では、「来年度予算案を成立させた後の4月から東京五輪・パラリンピック開幕の7月まで」はどうか。これも難しい。なぜかと言えば、そのあたりで一段の景気悪化が見込まれるからだ。
今年7-9月期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で前期比21・4%のプラスを記録したが、これは前期が激しく落ち込んだために、数字が大きくなったにすぎない。増加率ではなく水準で見れば、日本経済の潜在能力に比べて、30兆~40兆円もの需給ギャップが残ったままだ。
さらに、ジョー・バイデン政権が誕生する米国に比べて、日本の景気対策が見劣りするようだと、空前の円高に見舞われる懸念もある。第3次補正予算の規模にもよるが、来春以降は円高不況も加わって、企業倒産と失業が激増する可能性があるのだ。
となると、残る選択肢は結局、五輪とパラリンピックを終えた9月以降になる。
菅首相は就任当初から、コロナ対策や携帯料金値下げなど実績づくりに全力を挙げる姿勢を示してきた。新型コロナという前例のない事態を踏まえれば、任期満了選挙になったとしても「それなら、それで良し」ではないか。
ここは腹を据えて、政策遂行に全力を傾けるべきだ。
■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。