北陸新幹線金沢―敦賀(福井県敦賀市)間の開業が、予定されていた2023年春に間に合わないことが確実となった。延伸を見据えて街づくりや再開発などの準備を進めていた沿線自治体へのショックは大きく、さらなる地元負担の懸念もある。なぜ遅れたのか? 今後の見通しは?【岩間理紀】
トラブルと難工事
「工期は一日でも遅延を抑え、工事費は一円でも抑えるよう最大限取り組んでいく」
11月12日、福井県庁を訪れた建設主体の独立行政法人「鉄道・運輸機構」の北村隆志理事長はかすれた声で陳謝した。金沢―敦賀間の開業は約1年半遅れ、建設費は2880億円膨らむ――。それが機構が県に報告した「現時点での見通し」だ。
3月に石川、福井両県境の加賀トンネル(長さ約5・5キロ)で亀裂が確認され、計953メートルにわたってボルトを打ち込み変形を抑える追加工事が必要になった。敦賀駅の工事も、17年の計画変更で駅舎が大型化し難工事に。工事が集中したことで作業員や資機材が不足し、在来線と河川に挟まれた狭い作業スペースもネックになったなどと機構は経緯を説明。入札での不調・不落が頻発したこともあり、追加工事や必要な工期短縮策などで金額も膨張したという。
「遅れを隠して工事を進めた結果、工費も高くなったと考えざるを得ない」(杉本達治知事)「福井はなめられている」(畑孝幸・県議会議長)。報告の場は、機構と監督する国土交通省への批判の声であふれた。
金沢―敦賀間の開業は当初の計画では26年春だったが、15年の政府・与党合意で3年前倒し。地元では「100年に1度の好機」を合言葉に、23年春の開業に合わせて多くの事業が進んでいる。JR福井駅周辺の再開発、東尋坊周辺の再整備など数えればきりはないが、「全ての前提が崩れた」(福井県内の商工会関係者)のが現状と言える。
機構によれば、昨年夏の段階で「工期の遅延の恐れ」を認識していたが、工法の工夫で挽回できると考えていたという。「寝耳に水」の開業遅れの報告に地元は振り回され、連絡が早ければ防げた損失もあるのではないか。
「情報隠し、信頼関係損なう」知事が鉄道・運輸機構を批判
金沢―敦賀間の費用を巡っては、既に耐震基準の見直しなどを理由に約2260億円が増額され、総事業費は約1兆4120億円に膨らんでいる。
整備新幹線の財源は、JRが国側へ支払う線路使用料(貸付料)を充てて、残りを国と沿線自治体が2対1で負担する仕組みだ。新たに約2880億円が上乗せされれば地元負担は増え、経営分離される並行在来線会社の追加経費ものし掛かる可能性がある。
杉本知事は今月2日に12月県議会で、「機構とは2カ月に1回程度、情報交換してきたが(遅れるという)肝心な情報はずっと隠されてきた。信頼関係を損なう事態だ」と改めて批判。また、23年春を前提とした駅周辺の整備や民間投資が絡む追加経費や損失も「国が極力支援する必要がある」と訴えた。
国は有識者による検証委で工期短縮策などを検討中だ。12月上旬に中間報告をまとめるとしており、結果が注目される。