自民党の吉川貴盛元農水相(70)が、鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)のグループ元代表(87)から現金500万円を受領していた疑惑で、新たな展開だ。元代表が、元農水相で内閣官房参与の西川公也氏(77)にも現金数百万円を提供した疑いが浮上したのだ。西川氏は8日、参与を辞任した。東京地検特捜部の捜査では、別の「農水族議員」の名前も出ているとされる。「政治とカネ」の疑惑はどこまで拡大するのか。
関係者によると、元代表は、西川氏に対して2018年以降、複数回にわたり現金計数百万円を手渡していた疑いがある。西川氏は10月末、産経新聞の取材に「(アキタ社との関係は)一点の疑念もないと思っている」と話していた。
元代表らは18年11月、農水相だった吉川氏を大臣室に訪ね、家畜にとってストレスの少ない飼育環境を目指す「アニマルウェルフェア」(AW)をめぐる国際機関の厳格化案に反対する要望書を提出した。この際、西川氏も立ち会っていたという。
西川氏は今年7月、元代表から高級クルーザーで元農水官僚らとともに接待を受けていたことも指摘されている。アキタ社の顧問も務め、元代表を別の政治家にも紹介していた。
西川氏は、自民党農水族の重鎮として知られる。衆院栃木2区選出で6期務めた。14年に安倍内閣の農水相に就任したが、不正献金問題などで、わずか5カ月で辞任に追い込まれた。17年衆院選で落選したものの、農水行政に精通しているため、参与に起用されていた。
一連の疑惑では、複数の農水族議員の名前が取り沙汰されている。特捜部の捜査は、永田町を激震させそうだ。
政治評論家の伊藤達美氏は「特捜部の追及次第だが、さらに疑惑が拡大する可能性がある。吉川氏も、西川氏もかつての農水省トップで、農水行政そのものへの国民の不信感が高まりかねない。『政治とカネ』をめぐる問題が続き、菅義偉政権に与える影響は大きい。内閣支持率は確実に落ちるだろう」と語っている。