中1男女殺害事件の被告、控訴取り下げと後悔連発の言い訳

「わずか数時間後に後悔して大騒ぎ」「被告自身の責に帰すべき」。大阪高裁が11月、ある被告に対して下した決定には辛辣(しんらつ)な言葉がつづられていた。裁判官があきれ、怒りの矛先を向けたのは、中学生2人を殺害した罪で死刑判決を受けた後、2度にわたり1審大阪地裁判決の確定を意味する控訴取り下げに及んだ山田浩二被告(50)だ。弁護側は取り下げの無効を求めたが、高裁はこれを一蹴。決定文を読み解くと、裁判所や弁護人、遺族をも巻き込んだあまりに身勝手な言動が浮き彫りになった。
「私の命が…」
「もうこれ以上、耐えられない。ごめんなさい。やまだこうじ」
今年3月24日昼、大阪拘置所(大阪市都島区)で勾留されていた被告は、看守部長をインターホンで呼んだ。控訴取り下げ用紙を受け取ると、ボールペンで冒頭の言葉を殴り書き。わずか10分で提出を終えた。控訴を取り下げたのは、これが2度目だった。
だが、3時間後に弁護人と面会すると「やっぱりさっきの控訴取り下げ、やめれませんか」と翻意。高裁宛ての手紙には「無効にしてください。私の命がかかっています」などと記したという。
被告は平成27年夏に大阪府寝屋川市の中学1年の男女2人を殺害したとして殺人罪に問われた。殺意の有無や責任能力を争った1審大阪地裁の裁判員裁判で死刑判決を受け、即日控訴。経緯や動機面などで不明な点が多く、控訴審で真相解明に近づくことが期待されたが、公判を前に裁判は異例にして複雑な展開をたどることになる。
「看守が嫌がらせ」と邪推
最初の控訴取り下げは、1審判決から約半年後の昨年5月。被告はボールペンの貸し借りをめぐる看守とのトラブルをきっかけに自暴自棄になり、独断で控訴を取り下げたが、その後無効を主張した。高裁は被告の行為を「あまりに軽率」と指摘した上で、「今回に限り、取り下げを無効とする」と決定した。
しかし、高裁の別の裁判体(異議審)は今年3月16日、この判断は不適切だとして再検討するよう審理を差し戻した。そして、その結論を待たずに被告は2度目の取り下げに及ぶ。なぜだったのか。
異議審の決定は、控訴審を望む被告にとっては不利な内容だった。ところが被告は勘違いし、逆に有利な内容と受け止めたようだ。被告は当時、拘置所生活に不満を募らせており、看守らが有利な決定が出た自分への嫌がらせとして、外部への文書の発信制限や身体検査をしていると邪推。文通相手には「控訴を取り下げて嫌がらせから解放されたい」などとほのめかしていた。
そして3月24日、看守から規則違反を告げられた被告は、またも弁護人に相談することなく控訴を取り下げた。ところが再び心変わりしたのか、高裁宛ての手紙で《訳が分からなくなってやってしまった》《一時の感情だった》と取り下げ撤回を懇願している。
弁護人に同情も
1度目の控訴取り下げを「今回に限り無効」と寛大な判断をしたが故に、被告に顔を潰された形となった高裁の村山浩昭裁判長は、2度目の取り下げは軽視できないとして「有効」と決定。控訴手続きの終了を宣言した。
村山裁判長は「死刑判決が確定することを明確に意識し、自らの判断で提出した」と指摘。極めて重大な結果をもたらす行為に及びながら「わずか数時間後に早くも後悔し大騒ぎ」「ひとえに被告自身の責に帰すべき」と厳しく非難した。さらに「1度ならず2度も事態に対処するため、職責とはいえ多大な労苦を強いられた」と弁護人への同情ともとれる言葉も残した。
今回の決定に弁護人は異議を申し立てたが、覆らなければ死刑が確定する。2度にわたる身勝手な行動で裁判所と弁護人、そして遺族を振り回した山田被告。女子生徒の遺族の代理人は「一日でも早く結論を出してほしいという思いで過ごしてきた」と裁判終結に期待を示しながらも、「娘を亡くした悲しみが癒やされることはない」とコメントした。