コロナ禍の年末年始に一時停止となることが決まった「Go To トラベル」。重症者の増加に伴う医療崩壊の懸念が停止の世論を後押ししたが、GoToの責任にして危機が収まるのか、疑問を持つ専門家もいる。本当に「GoTo」だけが悪いのか?
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GoToトラベルをめぐっては、各地の医師会などが、医療現場の逼迫(ひっぱく)を理由に停止を求めた。
GoToトラベル利用者が、利用しなかった人よりも多く感染を疑わせる症状を経験したとの調査結果を東大などの研究チームが公表したことも大きく報じられた。「直接的に症状の増加につながったという因果関係は断定できない」との内容はほぼスルーされた。
メディアもGoTo開始当初は「お得な利用法」を宣伝していたが、感染者数が増えると「停止するべきだ」と騒ぎ、停止すればしたで「観光業者が悲鳴」と騒ぐマッチポンプも目立つ。
果たしてGoToを止めて感染も止まるのか。日本と韓国、米国の7月から12月上旬の新規陽性者数を比較したのがグラフだ。
GoToトラベルの開始は7月下旬だが、日本の感染「第2波」は8月上旬をピークに減少した。東京都が追加されたのは10月1日だが、「第3波」の本格化は11月後半以降だ。
「GoTo」を実施していない韓国も11月以降の上昇曲線は日本とよく似ている。米国も絶対数はケタ違いに多いが、増加傾向は類似している。
医師で医療ジャーナリストの森田洋之氏は、「各国のグラフを比較しても、いずれも冬場に自然な増加をしているようにみえる。『GoTo』を止めても、感染者数が大きく変化することはないのではないか」と話す。
「日本は補助金を出して旅行を推進する経済振興策を全国的に実施してきたが、欧米と比べても圧倒的に死者数が少ないのは事実だ。同様に総じて死者数が少ない東アジアや東南アジアが一律に強力な感染対策を実施しているわけではなく、人為的な対策には限界があると認識しなければならない」との見解を示す。
元厚労省医系技官の木村盛世氏も、「冬場に感染者が増えることは当然予想されていた。最近出た論文によると『GoTo』が感染を拡大しているとの結果なので影響があるのかもしれないが、『GoTo』の割引がなくなるだけで感染が止まると短絡的に考えるのは、大きな誤解だ」と指摘する。
「GoTo」停止による経済的な打撃も大きい。森田氏は、医師法第1条の《医師は、医療及び保健指導を掌(つかさど)ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする》という条文を引き合いに、こう批判する。
「ここでいう健康とは肉体的だけではなく、精神面や、人間関係のつながりなど『社会的な健康』も含まれている。経済的な犠牲者を出すことも医療の目的に反している」
「GoTo停止」より優先するべき政策について、前出の木村氏は「医療崩壊すれば社会が崩壊する。『GoTo』の問題だけにとらわれていては医療崩壊は防げず、経済と共倒れになりかねない。重症者対応は高齢者保護とほぼ同義だ。高齢者と非高齢者を区別し、非高齢者には日常の生活を、高齢者が在宅でも快適に過ごせる宅配サービスの充実などを行政が率先して取り組むべきだ」と語った。