新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の影響で、刑法犯の認知件数が多くの県で大幅に減少した2020年。しかし塀の中にも平等に訪れるコロナの存在は、警察にとって別の悩みを生んでいるようだ。
12月上旬、“留置場クラスター”が国内最大の人員を誇る警察署、警視庁新宿署で発生。コロナの感染者は、勾留されていた男や警察官など23人に及ぶ(12月13日時点)。
「始まりは、同じ部屋に勾留されていた3人の男でした。今月3~8日の間に相次いで発熱を訴え、検査したところ感染が発覚。他の留置人も検査すると、別の部屋からも次々と陽性者が出てきたのです。留置場を管理していた担当の警察官も4人、警察職員も1人感染が確認され、留置場自体も閉鎖された。勾留されていた面々は、大規模な留置施設のある原宿署が引き受けましたが、感染者のうち2人は、もともと任意捜査に切り替える予定だったこともあり、釈放されています」(社会部記者)
コロナのクラスターはこれまでに病院やライブハウスなどさまざまな場所で発生してきたが、実は警察の留置場も何度も感染者が発生している穴場だ。同じ警視庁管内では4月に渋谷署に収容されていた7人の感染が発覚し、これまた一時閉鎖に追い込まれている。
警察庁も手をこまねいていたわけではない。2月の段階で各都道府県警に対し、個室に収容したり、風呂も1人で入れたりするよう指示をしていた。だが、捜査関係者は「留置施設には空きがあるとはいえ、個室のみの収容とするのは限界があり、三密(密閉、密集、密接)を完全に避けるのも無理がある」と嘆息する。
警察官がコロナの媒介となった可能性も
留置場の広さ(相部屋)は、基本的に1人あたり2.5平方メートル。隅っこにうずくまらない限り、2メートルのソーシャルディスタンスも取れない。鉄格子越しにある程度の換気はされるかもしれないが、娯楽もない留置場では同居人との会話ぐらいしか暇を潰す策もなく、ウイルスが飛び交う蓋然性は増す。飲食もそこで済ませるのだから飛沫感染のリスクも潜む。
弁護士らと面会できる面会室にはコロナの前からアクリル板が設置されているが、会話のために穴が空いており、意味はあまりなさない。しかも、留置人同士や弁護士だけでなく、警察官との接触も頻繁にある。
警察関係者が明かす。
「身体検査はもちろん、手錠をはめたり外したりもする。送検時には車で大勢の留置人を運びます。唾液がつく歯ブラシなども、その都度預かっている。新宿署の感染者には個室に留置されていた男もいました。警察官がコロナの媒介となった可能性も否定できません」
留置場の「三密」も捜査する必要がありそうだ。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年12月24日号)