政治家捜査、問われる手腕 特捜部、数十人規模の聴取

安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前夜に主催した夕食会をめぐり、安倍氏側が費用を補填(ほてん)し政治資金収支報告書に記載していなかった事件。政治家の資金問題は、検察に寄せられる告発の多くが不起訴処分となるが、今回は公設第1秘書という「地元の筆頭秘書」が政治資金規正法違反罪で略式起訴される結末となった。東京地検特捜部は、前政権トップだった安倍氏の事務所をめぐる資金問題について、国民から疑惑の目を持たれぬよう処理すべく、通常以上に慎重な捜査を行った。
秘書は補填を早々に認める
「まさか本当に補填しているとは」。ある検察幹部は事件の報告が上がってきた当時をこう振り返る。別の幹部は昨年秋に国会で夕食会の会費が安いのではないかという問題が取り沙汰された際、「安倍さんのような大口の顧客なら特別な割引でもあるのだろう」と話していた。
政治資金規正法違反罪のほか、補填が有権者への寄付にあたるなどとする公選法違反罪でも告発があり、特捜部は安倍氏が首相を辞任した今秋以降、関係者への聴取を開始。秘書のほか、夕食会の参加者ら数十人規模の聴取を行ったが、略式起訴された後援会代表の配川博之公設第1秘書(61)らは補填の事実を早々に認めていた。
公選法違反罪については、参加者も秘書らも寄付の認識がないことが確認され、早々に不起訴処分が見込まれた。一方で、補填分は収支報告書に記載しておらず、政治資金規正法に違反するのは明白だった。
会費も不記載認定
特捜部では当初から、参加者の会費も後援会の収入として記載した上で支出も記載すべきだと考えていたが、著名な検察OBらが集まった弁護側は反発。ホテル側と参加者の間で契約が交わされ、安倍氏側は会費の取次ぎをしたに過ぎず、不記載は補填分のみだと主張したという。
検察側は、ホテル側から安倍氏側に費用総額が記された見積書や請求書が送られており、夕食会が後援会の主催だったことを重視。会費分も含めた総額を後援会の収支報告書に記載すべきだったと認定した。
不正な収入なし
補填分の原資は事務所の金庫から支出されていた。不記載事件では原資となる収入を隠しているケースも考えられるが、安倍氏の事務所の場合、原資は収支報告書に記載された通常の収入で、特捜部が帳簿を確認しても不正な収入などは見つからなかったという。
ただ、悪質な事案ではないからこそ「国民に疑惑の目を向けられないよう丁寧に処理する必要があった」(検察幹部)。罪に問うのが困難なのは明らかだったが、特捜部は今月21日、安倍氏本人の認識を直接問う必要があるとして聴取。3日後に不起訴処分とし、年内の捜査終結にこぎつけた。