全国の刑務所に収容されている女性受刑者のうち、食べ吐きを繰り返すなどの摂食障害がある受刑者が2018年で181人いたことが、法務省の特別調査で判明した。13年調査と比べて1・5倍に増加。13年は窃盗罪が約7割で、18年もほぼ同じ傾向だという。法務省は、19年度から症状が重い受刑者を医療刑務所に収容する運用に変え、集中的な治療で再犯防止に乗り出している。
すべての女性受刑者のうち窃盗罪は約4割で、摂食障害がある受刑者の7割は突出している。窃盗事件の背景に摂食障害が指摘されることがあり、18年にスーパーで食べ物を万引きしたとして有罪判決を受けた女子マラソン元日本代表選手も摂食障害で悩んでいたと明かした。法務省などによると、症状の一つである過食症の影響でストレスなどから食べ物などの万引きを繰り返し、服役するケースがあるという。
刑務所内で摂食障害がある受刑者への処遇が課題となっており、法務省は実態を把握するために13~18年に全国の医療刑務所と女子刑務所の女性受刑者を対象に特別調査を実施。食べ吐きを繰り返すなど異常な食行動があり、摂食障害が疑われる受刑者は、13年9月時点で124人▽14年は130人▽15年は139人▽16年は180人▽17年は199人――で、18年6月時点は181人と5年間で1・5倍に増えていた。
一方、女性受刑者の総数は4159人(13年)から3512人(18年)と減少しており、摂食障害がある受刑者の割合が2・9%から5・1%と増加していた。
法務省によると、摂食障害の女性受刑者の傾向として、高学歴で就労経験がある人が多い一方、アルコール依存などの精神疾患を併発しているケースが少なくないという。また、被害が低額な万引きで再犯を繰り返して実刑判決を受けているため、症状が重症化している場合も多いとみられる。
法務省は、全国にある医療刑務所のうち3カ所に摂食障害の専門医を置き、食事療法やカウンセリングなどの専門的な治療を進める他、各地の女子刑務所の医師や刑務官らへの研修を実施している。同省矯正局の担当者は「摂食障害がある受刑者の症状は慢性化しており、社会のセーフティーネットからこぼれ落ちた存在と言える。再犯防止のためには、出所後も本人の治す意思と医療につながる仕組みづくりが欠かせない」と話している。【飯田憲】
摂食障害
体重増加を極度に恐れて食事を制限する「拒食症」、衝動的に大量の食べ物を食べる「過食症」が代表的な症状の精神疾患。患者の9割以上が女性と言われ、10~20代の発症率が高い。自覚がない潜在的な患者も一定数いるとみられる。栄養不足や低カリウム血症などの合併症や自殺によって患者の約1割が死亡するとの推計もある。一部の患者は自傷行為や万引きなど衝動的な問題行動を伴うことがある。