紀州のドン・ファン、遺産の行方は…文書で「全財産を市に寄付」

子供がいなかった野崎幸助さん(当時77歳)は約13億2000万円の遺産があり、死後、全額を和歌山県田辺市に寄付するという文書が見つかった。妻だった須藤早貴容疑者(25)には法律上、遺言内容にかかわらず半額の相続を請求する権利があるが、事件の行方によっては権利を失うこともある。
野崎さんは酒類販売業や金融・不動産業を営み、高額納税者として度々公表されるなど、資産家としても知られる。野崎さんが「全財産を田辺市に寄付する」と赤いサインペンで書いたとされる文書を知人に託していたことが死後に判明。和歌山家裁田辺支部は遺言書の要件を満たしていると判断し、支部が選任した弁護士が遺産を算定した。
田辺市が2019年9月に公表した野崎さんの遺産は、土地42筆▽建物36棟▽預貯金約3億円▽有価証券等約9億7500万円▽自動車8台▽絵画3点--など。他に、額が確定していない不動産や美術品などもある。
市は不動産鑑定費用など、受け取りに必要な予算を市議会で可決し、手続きを進めている。一方、野崎さんの兄ら親族4人は20年4月、遺言書とされる文書に不自然な点があるとして、無効を求めた訴訟を和歌山地裁に起こした。
和歌山弁護士会の廣谷行敏弁護士によると、仮に遺言書が有効で市に全額寄付されたとしても、妻だった須藤容疑者は半額の約6億6000万円の相続を請求する権利がある。
ただ、民法は「相続人が故意に被相続人などを死亡させ、刑に処せられた場合」は相続の資格がないと規定。仮に須藤容疑者が殺人罪などで実刑が確定すれば、相続の権利を失う可能性がある。【木村綾】