新型コロナウイルス感染拡大の影響で、救急搬送を要請してもなかなか病院が見つからない「搬送困難事例」が急増している実態が浮かんだ。医療崩壊につながりかねない事態に救急現場は「救える命も救えなくなる」と危機感を募らせる。
東京都足立区の等潤病院には昨年12月以降、発熱などのコロナ疑いで救急搬送される患者が増えている。
同病院は救急隊による搬送調整ができない際に患者を受け入れる都の「地域救急医療センター」に指定されている。足立、荒川、葛飾の3区が担当だが、最近は江東区や台東区など本来は受け入れ対象外の地域からの搬送も目立つようになってきた。
地域救急医療センターに指定されている病院は、救急医療において中心的な役割を担う。他の地区からの搬送が増えていることは、そうした病院でさえ医療体制が逼迫(ひっぱく)している現実を示す。
伊藤雅史院長は「搬送先が見つからず、うちに流れてくるようだ。どの病院もコロナ禍で厳しい対応を迫られている」と話す。
一方、等潤病院によると、この病院から他の病院に転院させる場合も、時間がかかるようになっている。
等潤病院にはコロナの専用病床はなく、コロナ疑いの救急搬送を受けた場合は、一般救急とは別に設けたコロナ疑い患者用のベッド4床で応急措置を実施する。その後、PCR検査で陽性と判明すれば、感染症の治療ができる専門病院に転院させる対応を続けてきた。
ただ、昨年末から転送先の病院のコロナ病床も逼迫し、転院に1日から2日かかることが珍しくなくなった。これに伴い、コロナ疑いで搬送される患者のための4床の空きがなくなり、新たな受け入れを断らざるを得ないケースが生じ始めている。
先月31日には、都立広尾病院(渋谷区)が重い病気やけがをした患者を受け入れる救命救急センターを停止した。病床がコロナ患者でほぼ埋まったためという。
東京都医師会の猪口正孝副会長は7日、都庁で開かれた会議で「救急受け入れ体制が逼迫している」と、コロナの新規感染者数を抑える必要性を訴えた。
都救急災害医療課は「『第1波』の時はコロナ疑いの受け入れが整備できていなかった病院が多かったことが救急逼迫の要因だった。しかし、今回は感染者の急増に病院の人手やベッドが追いつかなくなっていることが影響している」と強調する。
都内で心臓疾患の救命救急を行う病院の医師は「冬は心筋梗塞(こうそく)や脳卒中が最も多くなる季節。こうした病気は搬送に時間がかかれば命を落とす危険性が高くなる。救命に取り組む病院の連携を強化して乗り切るしかない」と話す。【島田信幸】