中止、ウェブ、分割開催 判断分かれた成人式 着物業界悲鳴「宣言出すなら補償を」

「成人の日」の11日、緊急事態宣言の対象地域である首都圏の1都3県で、成人式の会場での開催を巡って自治体の判断が分かれた。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて中止やオンライン開催にする自治体が相次ぐ一方、横浜市や東京都杉並区などは実施に踏み切った。「式典があって良かった」「中止は仕方ない」――。新たな門出を迎えた新成人たちは社会を取り巻く状況に思いをはせた。【南茂芽育、宮島麻実、林田奈々】
終了後の会食自粛求める
全国の市区町村で最多となる約3万7000人が新成人となった横浜市は、2会場で8回に分けて式典を開いた。2020年7月、新型コロナの影響でいったんはオンライン開催を決めたが、開催を希望する新成人の声を受けて9日後に一転して会場開催に戻した。
会場の一つとなった横浜アリーナ(港北区)では、検温を受けた新成人らが1席ずつ間隔を空けて着席した。鯉渕信也教育長が「新成人の責任と節度ある行動を信じ、開催を決断した」と、帯状疱疹(ほうしん)のため入院した林文子市長の祝辞を代読した。式典は新成人の誓いなどを含めて15分に短縮し、終了後の会食の自粛を呼びかけた。
参加した同市青葉区の学生、永見大智さん(20)は「一生に一度の経験なので、感染対策をした上で来た。医学を学んでいるので、医療の大切さを学びながら新成人として役割を果たしていきたい」と話した。
東京都杉並区は23区の中で唯一、会場で式典を行った。実施回数をこれまでの倍の4回とし、国歌斉唱の際は声を出さないようにする対策を取った。あいさつに立った田中良区長は、危惧されているのは式そのものよりもその後の飲み会だとし、「私はあなたたちをまずは信頼したい。(式の後は)酒盛りを控えて家に帰り、今日まで見守り支えてくれた人に『ありがとう』と伝えて」と呼びかけた。
出席した大学2年、壇実(み)のりさん(19)は「中止になるかと思っていたけどうれしかった。責任を持って期待を裏切らないようにしたい」と話した。一方、大学2年の男性(20)は「1人暮らしの若者は気を引き締めるきっかけがなかなかない。(呼びかけを)聞かない人もいるかもしれない」と心配した
中止で写真撮影のみ「成人式は正直うらやましい」
神奈川県小田原市は6日に会場での実施を中止し、オンライン中継とすることを決めた。専門学校生、高野紗那さん(19)は美容院を予約済みで、式典が予定されていた10日に晴れ着姿となって写真を撮った。動画配信サイト「ユーチューブ」で出席者のいない式典がライブ中継されたが、「皆で見られるわけでもない」とさみしそうだった。感染リスクを考え、会場での式典中止を「やむを得ない」と話すが、実施する自治体もあるため「一生に一度の成人式に出られるのは正直うらやましい。小田原も延期できなかったんだろうか」との思いも抱えたという。
一方、東京都江戸川区の会社員の女性(20)は式典があっても出席しないと決め、6日に「成人式が開催されるのが嫌で仕方ないです。自分自身が感染を広げる主になるかと思うと行けません」とツイッターに投稿していた。同区は8日になってオンライン開催に変更した。女性は今年に入って病気で弟を失ったばかり。「マスクをすれば大丈夫という保証なんてない。これ以上家族を失いたくなかった」と語り、11日は自宅で過ごした。
着物レンタル半分キャンセル
着物レンタル会社からは悲鳴が上がった。東京・銀座の「着物興栄」は約30人から晴れ着をレンタルする予約があったが、6日時点で半分が取り消された。「客の都合によらないキャンセル」となるため、キャンセル料は発生しない。損害は約500万円に上る。成人式当日も「撮影のために着付けだけはしたい」と客が訪れるため、慶佐次真紀社長(41)は「人件費はかかるが、店を閉めることはできない」と話した。
着物業界にとって、成人式は大きな稼ぎ時でもある。時短営業に応じた飲食店には「協力金」が支払われる一方で、その他の業界には予定されていない。「緊急事態宣言を出すなら補償をしてほしい。行政の補助がなければ、業界はやっていけない」と危機感を募らせた。