新型コロナウイルスの感染者の増加に歯止めがかからず、千葉県内にも緊急事態宣言が再発令された。重症や中等症の患者の治療に当たっている千葉大学医学部付属病院(千葉市中央区)では2020年末から患者が急増し、一時的にコロナ患者だけでなく一般の救急患者の受け入れができなくなる事態に直面した。横手幸太郎院長は「コロナ診療と救急医療の両方を回していくことが難しくなりつつあり、救える命も救えなくなる状況が目前に迫っている」と訴えている。【山田利和】
回復患者の受け入れ不足 専門医手いっぱいに
感染症指定医療機関の同病院は、同年2月初旬から患者の受け入れを開始。糖尿病や心臓病などを診る二つの一般病棟(計92床)を一時、60床のコロナ病床に転用するなどし、同11月末までの約10カ月間で計約150人を受け入れた。年末以降、患者が急増し、1月14日には計200人を超えた。
県は5日から、千葉市の病床確保計画を最も深刻な「フェーズ4」に引き上げ、同病院は20床に減らしていたコロナ病床を再び60床に増床。このうち4床だった集中治療室(ICU)を近く8床に増やすため、救急病棟1棟を閉鎖し約20人の看護師を確保する。
横手院長は新型コロナの診療を巡って、医療機関間の“温度差”を指摘する。同病院のように複数の病棟を転用・閉鎖してコロナ病床を確保する急性期の病院がある一方、治療を終えた回復期の患者を受け入れる病院が十分ではないという。「コロナ患者は肺などにダメージを受けていることが多く、治療後もリハビリが必要なケースも少なくない。しかし、コロナ患者だったということで転院を受け入れてもらえないこともある。このままでは急性期の病院は新たな患者を受け入れることができなくなる」と話す。
コロナ診療がその他の救急患者の命を脅かしかねない状況にもある。コロナの重症患者は、ICUで人工呼吸器や人工心肺装置「ECMO(エクモ)」を必要とし、担当するのは救急・集中治療医となる。「救急の専門医がコロナ患者で手いっぱいになると、他の救急患者を受け入れることができなくなる。心臓血管の病気や大きな事故などは一刻を争うケースも少なくない。通常の体制であれば助かる場合であっても、速やかな救急医療につなげられず、命を失うこともあり得る状況になってきている」と懸念する。
深刻化するコロナ危機を乗り越えるため、横手院長は「すべての医療機関はそれぞれ、重症患者を診る、軽症患者を診る、回復期にある患者を受け入れるなど、可能な役割を果たすという意識を共有し、実践しなければならない」と訴える。また、コロナ患者の数は地域によって異なり、「通常の圏域を超えた医療連携がより重要になる。国や県は医療資源を十分に活用する仕組みを整えることが急務だ」と強調する。
また、県民には、マスクの着用や手指消毒など感染予防の徹底を求めるとともに「患者を受け入れられず断らなければならないことは、医療の最前線で奮闘するスタッフにとっては苦渋の思いであり、ものすごく悔しいことでもある。感染者を増やさないよう協力してほしい」と求めている。