感染経路が分からない新型コロナウイルスの変異株による「市中感染」とみられる事例が国内で初めて確認されたことを受け、加藤勝信官房長官は19日の記者会見で、ウイルス検査や国立感染症研究所で行うゲノム(全遺伝情報)解析能力を向上させるなど変異株の国内での監視体制を強化する考えを示した。すでに政府は国内での広がりを調べるため、検体の一部を感染研に集めてゲノム解析しているが、検体数を増やすなど取り組みを加速させる。
厚生労働省は18日夜、静岡県内在住の20~60代の男女3人が、英国で流行している変異株に感染したことを発表。3人は英国の滞在歴がなく、海外の滞在歴がある人との接点も確認されていない。市中感染したとみられる国内で初めてのケースで、昨年12月以降、空港検疫や海外からの帰国者との接触など感染経路が把握できた計42人の事例とは意味合いが異なる。
英国由来の変異株は従来のウイルスより感染力が最大70%高い可能性があるとされる。加藤氏は会見で「静岡以外の地域でも変異株の感染の可能性を想定しながら、監視体制、チェック体制を強化していきたい」などと強調した。
感染研は、感染した3人が不特定多数との接触がないことなどから、「現在、変異株が地域で面的な広がりがあるとの証拠はない」として、国内での感染拡大を否定。政府は昨年12月から英国からの入国を制限したが、英国内では同9月には変異株による感染が発生していたとみられる。
田村憲久厚労相は19日の記者会見で、「英国は(9月)当時、国境は自由な出入りがあった。9月からなら他国にも入っていると推測される。水際対策を強化してきたが、国内に患者が絶対ないとは言えない」と述べた。
大橋順・東京大准教授(集団遺伝学)は「英国の変異株の感染力がこれまで日本国内で流行していた株よりも強ければ、今後国内での流行の主流になっていく可能性は否定できない。変異株が市中で広まっていないか、全国レベルで調べ、感染者の増え方によっては先手で休業要請など対策を強化すべきだ」と指摘する。
その上で、一般的な風邪の原因となるコロナウイルスは2月が流行のピークといい、「新型コロナも同様の傾向だと仮定すれば、2月にかけてこれ以上感染を拡大させないようにすることが大事だ。変異株であっても(マスク着用や3密回避など)やるべき対策は変わらない。基本的な感染予防策を徹底してほしい」と話す。【中川聡子、佐藤慶、岩崎歩】