東京電力は27日、再稼働を目指す新潟県の柏崎刈羽原発7号機で「12日に完了した」としていた安全対策工事がまだ終わっていなかったと発表した。工事完了を説明する住民説明会を始めた直後の発覚で、社員のID不正入室問題に続く失態。再稼働の可否判断をする県や地元からも不信の声が上がり始めた。【内藤陽、井口彩】
相次ぐ失態、再稼働に不信
東電によると、安全対策工事が未完了だったのは、6、7号機コントロール建屋の機器を制御する電源盤や空調機などが置かれた部屋にある消火ガスの流出防止装置。火災発生時に消火ガスが室内に十分行きわたり、排出されないよう空調ダクトを閉じるための鉄板(ダンパー)の設置工事だった。6号機の安全対策工事として管理されていたため、東電が見逃していたとみられる。この工事について東電広報は「安全第一にできるだけ早く完了させるが、現時点で具体的な完了の見通しは立っていない」と説明した。
「本当に申し訳ありません」。未完了が発覚したこの日夜、刈羽村生涯学習センターラピカであった地域説明会で橘田昌哉・東電新潟本社代表は、ID不正入室問題と併せて陳謝した。これに先立つ同日の刈羽村議会への説明会冒頭で、橘田代表は「一部工事に未完了があった」と報告したが、詳細は明かさなかった。
度重なる東電の失態に、自治体関係者や住民からは驚きや戸惑い、東電の資質を疑問視する声が上がった。
「子どもじゃないのに、一体どうなっているんでしょう」。真貝維義・柏崎市議会議長は度重なる東電のミスにあきれ、ID問題と工事未完了についても市議会に説明するよう東電に求める考えを示した。桜井雅浩市長は「誠に残念だ。施工管理が不十分と言わざるを得ない。ID問題とあわせて、本件について詳細を速やかに報告してほしい」とのコメントを出した。
県は27日午後、東京電力の担当者を県庁に呼び、熊倉健・防災局長が説明を受けた。県原子力安全対策課によると、熊倉局長は「発電所の安全対策工事全体の信頼にも影響するものであり、極めて遺憾である」と伝え、他にも同様の事案がないか調査することと、原因を徹底究明することを要請した。
同課によると、東電から工事の未了の連絡が入ったのは27日午前。橘田代表から熊倉局長に直接電話があったという。県は経緯について問い合わせたが東電は「いま調べています」とだけ述べ、詳しい説明はないという。担当者は「なぜこうした事態が起きたのか、まずは事実確認を求めたい。ID不正入室問題が起きた直後ということもある」と話した。
再稼働に反対する「柏崎刈羽原発市民研究会」の竹内英子共同代表は、「えっ、そこ?」とあっけにとられたという。「ごく基本的な工事が軽んじられているような気がする。組織の資質・適格性にかかわる問題だ。とても原発を扱えるような組織ではない」と批判した。
可否判断、県民の声を 市民有志 3月から署名活動
県が東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の可否を判断する際、住民投票や出直し知事選などで県民の声を聞くよう、花角英世知事と桜井甚一県議会議長に求める署名を、市民有志が3月に始める。
呼びかけ人は、東北電力巻原発の建設を住民投票で否決し、撤回させた旧巻町(現新潟市西蒲区)の笹口孝明元町長(72)ら7人。
花角知事は2018年の知事選で、再稼働に関し「県民に信を問う」と訴えて初当選したが、現在はその方法を「決めていない」とする。有志は、知事や県議の判断だけでは県民の民意を反映できないと訴え、夏ごろまで街頭やネットで署名を集める。県の検証委員会に県民の声を反映させる工夫も求める。
27日記者会見した笹口さんは「巻町では、原発ができれば一人一人の将来に影響があるのだと皆が受け止め、自分たちの将来を自分たちで決めることができた。政治家にとって一番大切なのは約束を守ることだ」と話した。【井口彩】