18歳以下の専用相談電話を運営するNPO法人チャイルドライン支援センター(事務局・東京)が、新型コロナウイルス対策で縮小を余儀なくされた相談電話の代わりに、子どもたちが匿名で思いを自由に書く投稿欄をホームページに設けたところ、毎月約800件の書き込みが寄せられている。コロナ禍で抱えるストレス、両親の不和、友達との関係、LGBTなど性的少数者の悩み……。ホームページ上で公開されている投稿からは、人知れず苦しむ子どもたちの「心の声」が伝わってくる。
「コロナでお父さんの給料減った」
「私の親は夜中に夫婦喧嘩(げんか)をします。お父さんが怒鳴って、お母さんが泣いて、私は部屋にこもって、怖くて泣いています。どうすれば仲良くなるのかな……」
「大切な友達が虐待にあっています。私に何ができるでしょうか。ただひたすらに、話を聞き、寄り添い、精神的な面を懸命に癒やそうと努めることしかできないのでしょうか」
これらは、チャイルドラインがホームページ上で「みんなのつぶやき」と題して紹介している投稿の一部だ。コロナ禍の生活で抱える不満や悩みを打ち明ける子どもたちも多い。
「部活の大会とか文化祭とかないんなら高校どうでも良くない?」
「コロナでお父さんのお給料が減った。来年受験生だから苦手な数学を勉強したいのにお金がないから我慢して親に言えない」
前回の緊急事態宣言で電話相談縮小「思いを吐き出せる仕組みを」
子どもたちの投稿欄「つぶやく」が誕生したのは2020年6月末。きっかけは前回の緊急事態宣言だ。
チャイルドラインは毎日午後4~9時、全国68の実施団体が連携して子どもたちからの電話を受けているが、宣言発令でボランティアスタッフが集まることによる感染リスク対策を迫られた。このため15~20団体が一時的に活動を休止・縮小。電話の回線数は普段の3割程度に絞らざるを得ず、電話がつながりにくい状況が生じた。
「電話で声を受け止めきれない中、子どもたちが思いを吐き出せる仕組みを作りたい」と考え、始めたのが匿名の投稿欄だった。投稿に際し年齢を書いたり性別を選んだりする欄はあるが、回答は任意。書き込んだ内容は年齢と性別は伏せた上で、できるだけホームページで紹介するが、「公開しない」を選ぶこともできる。
書き込みは30字程度の短いものもあれば、800字超の長文も。体と心の性が一致せず思い悩む子どもからの投稿も目立つ。
「男になりたいと思うことはおかしいことでしょうか。女が俺と言うのはおかしいでしょうか。女を好きになってはいけないのでしょうか」
投稿欄の開設から半年以上たった今も1日あたり30件程度の書き込みがある。電話と違ってボランティアの受け答えがなく、返信もないのに、子どもたちはなぜ思いをつづるのか。
「吐き出すことが気持ちの整理につながる」
チャイルドライン支援センターの向井晶子事務局長は「ツイッターやインスタグラムなど自分の意見を書き込む場は増えているが、『つぶやく』では素性を明かす必要も相手の反応を気にする必要もない。考えを文章にして吐き出すことが気持ちの整理につながっているのだと思う」と語る。
実際、「こういうふうに誰かに話すことで少しは気分転換になることに気がついて、ここにつぶやいてみた」という書き込みもある。公開された投稿を読み、他の子どもたちと思いを共有できる効果も大きいようだ。
「ここにはたくさんのLGBTの人がいて、皆苦しんでるんだって思ったら、仲間がいたみたいになってすこしうれしかった」
教育評論家の尾木直樹さんは「誰かがつながって受け止めてくれたということ自体が、子どもたちの安心材料になっている」とし、対等な立場で悩みを共有し、癒やしや励ましを得る「ピアカウンセリング」の効果を期待できると指摘。また「公開の書き込みは大人にとっても、子どもの理解を深め、寄り添う参考となるのではないか」と話した。
チャイルドライン支援センターは、公開する投稿を定期的に更新している。【青木絵美】
ホームページで紹介された「つぶやき」の例
◆家族関係
「何で母は相談しても説教しかしないんだろう。私は説教が欲しいんじゃなくて共感が欲しい」
「仕事終わってから家事をやってすごく疲れてるの十分分かってるつもり。分かってるけど聞いてほしい。『疲れたから後にして』って言われて結局いつまでも聞いてくれなくて、適当に相づちされて。少しでもいいからちゃんと話聞いて」
「親が毎日ため息をつく。私のせいでストレスがたまっているのかとつらくなる。いい子じゃなくてごめんなさい」
「私の両親は最近ずっと仲が悪いんです。けんかが絶えません。2人の悪口を聞いていますが、すごくストレスたまるんです。なんだか生きてる意味が分からなくなったり、いっそ家出してしまおうって思ったりして、毎日憂鬱です。私はどうすればいいんでしょうか? 私は生きていていいんでしょうか?」
◆友人関係
「私はいつも友達の悩み事を聞く側で、自分の悩み事は言えません。しんどいです。私が生きてる理由ってあるのかな」
「いつも、誰かのために笑うのがつかれた。面白くないのに、うれしくないのに、笑うのも少し嫌だ。笑うのは、自分が好きな時がいい。誰か一人でもいいから、この悩みを打ち明けたい」
◆勉強
「なんで成績表があるの? 先生だけが正しいわけじゃないのに! 先生から見たら△でも、自分ではがんばろうとしてることだってあるのに」
「テストで悪い点を取っても怒られない。でも、いい点を取っても褒めてはくれない。頑張ったね。すごいじゃん。そんな一言でいいのに。この一言で私は救われるのに。お願いだから誰か私を褒めて」
◆LGBTなど
「僕は性同一性障害の疑いがあります。親には言っていないですが。スカートなんかはかずに、ズボンをはいて、髪の毛を短く切って、胸なんていらない。学校でも言えないし、どうしたらいいんでしょうか」
「自分の性に悩まされています。母親に言うと『あんたは女』『女は女だから』と言われます。無理に理解しろとかは言わないから。認識してほしい。『そういう人もいるんだ』ってことを」
◆新型コロナウイルス
「いとこがコロナウイルスになって私も検査した。陰性だったけど2週間ガッコウに行けない。もう少しで行けるんだけどみんなの反応が怖くて行きたくない。誰も信用できないよ」
「子供はみんな遊びに行くの我慢しているのに、なんで大人は飲み会に行くの? ストレス発散? 子供の方がたまってるに決まってるじゃん。休みが多かったから勉強しろ。今年は遊びに行くな。修学旅行は無し。本当にヤダ」
不安や悩みの主な相談窓口
チャイルドライン支援センター(18歳以下対象)
0120・99・7777(毎日午後4~9時)
木・金と第3土曜の同時間はチャットでも対応
「つぶやく」の投稿欄
よりそいホットライン
0120・279・338
(岩手、宮城、福島は0120・279・226)
生きづらびっと
https://yorisoi-chat.jp/
自殺予防いのちの電話
0120・783・556
BONDプロジェクト
(10~20代の女性向け、LINEで受け付け)