新型コロナウイルス感染者の急激な増加を受け、休業・自粛要請下にある北海道の小樽市。街を歩くと、道内屈指の観光地は昨年春に続き再び閑散としていた。イベントが続く2月は書き入れ時なだけに、商店主らは「精神的にやられそう」とため息を漏らした。【高橋由衣】
1月29日午後3時過ぎ、観光名所の小樽運河。観光客の姿はほとんどない。気温0度。降り積もった雪が寒々しさを増していた。
スマートフォンを手に運河を撮影していた女性に声を掛けた。昨年、道外から転勤のため札幌市に引っ越してきた30代会社員。「目当ての店があって、人も少ないかなと思って初めて小樽に来た」。「密」を避けられると考え、あえて観光に訪れたという。
この前日、道は小樽市に対し、市内での不要不急の外出と同市への往来自粛を2月15日まで要請し、同市も市内の酒類を提供する飲食店に休業を要請していた。
女性は続けた。「観光地というイメージはあったけど、店も全然開いていないし、寒いし、もう帰ろうと思う」。こう言うと、駅へ歩いて行った。
しばらくすると、高齢の女性が通りかかった。市内に住むという70代。閑散とした運河に目をやり、寂しげにポツリ。「本当はもっと観光客がいるんだけどね。商店街にも全然人がいないし、1年で変わってしまった」。複雑な心境も口にした。「私も高齢なので、(ウイルスが)近くに迫っている怖さはある。要請を出してもらってよかった」
小樽堺町通り商店街も人影はまばら。堺町通りは明治や大正期の建築物が並び、古めかしい街並みが国内外の観光客に人気だ。例年2月は中国の春節(旧正月)で多くの中国人らが訪れ、街をキャンドルの淡い光で彩るイベント「小樽雪あかりの路(みち)」が行われ、観光客でにぎわう。
しかし、新型コロナの影響で国内外の観光客は激減し、雪あかりも中止。「さかいまち盛り下がっているぜーっ!!」などとユニークなポスターを製作し、昨春以降の低迷期を支えてきた同商店街振興組合にも落胆の色がにじむ。
組合で事業推進マネジャーを務める坂口武さん(34)は「売り上げがこれ以上悪くなるとは思わないが、精神的ダメージはある。商店街全体で閉塞(へいそく)感を感じるようになった」。
政府の観光支援事業「GoToトラベル」や道の「どうみん割」が始まった昨夏ごろから、団体観光や道内の修学旅行生らでにぎわいが戻りつつあった商店街。全国的な感染拡大を受け、昨年12月下旬にGoToなどの観光施策が停止されると、客足は激減した。そして、今回の休業・自粛要請。坂口さんは「小樽を敬遠する傾向が出てくるのでは」と懸念を深める。
「商店街の明かりは消せない」。すし屋の店主、武田賢一さん(52)は、こんな思いから政府の緊急事態宣言が出された昨年4月も営業を続けた。当時、月の売り上げは100万円を下回った。だが今、それも下回る勢いで客足が途絶える。
武田さんはこぼした。「今日もお客さんは1組だけ。店を閉めると精神的にやられそうだが、閉めて銀行巡りをした方がいいのかな」
この1年で、組合に加盟する5店舗が閉業した。現在、加盟90店のうち4割強は休日のみの営業を強いられている。
1月感染者急増、病床増設へ
「これまでにない患者数で、医療従事者も病床も非常に逼迫(ひっぱく)している」。小樽市保健所の担当者は1日、毎日新聞の取材に危機感を示し、新型コロナウイルス患者の病床を市内で約10床増やす方針を明らかにした。
市内の1月の新型コロナウイルス感染者は395人で、それまでと比べ突出している。初めて感染者が確認された2020年3月からの10カ月分(計313人)を超えた。
急激な感染者の増加は、医療提供体制を圧迫する。市内で確認された入院患者70人のうち、約15人は市外で治療を受けざるを得ない状況だ。
市内で入院している約55人のうち、約40人はクラスター(感染者集団)が起きた石橋病院と北海道社会事業協会小樽病院で治療中。
残り約15人は市内唯一の指定医療機関に入院。このうち2人が重症だ。この医療機関は約30床を確保するが、容体急変などに備え、市は今週中にも別の医療機関に約10床を新設する。【高橋由衣】