福岡に「中洲大学」 歓楽街で働く女性の苦境に救いの手 資格取得など後押し

九州最大の歓楽街、中洲(福岡市博多区)にほど近い商店街の一角に、夜中まで子供を預かっている保育園がある。利用しているのは中洲の飲食店で働く女性たち。園の代表、草野真由美さん(54)もスナックを経営しながら同じ境遇の女性たちを支えてきた。開園から5年。新型コロナウイルスの感染拡大で夜の街で働く女性が苦境に立たされている。草野さんは新たに「中洲大学」を始めた。歓楽街の大学の狙いとは。
中洲と川を挟んで南北に延びる上川端商店街内にある夜間保育園「マミーハウス」。夕方、草野さんは、よちよち歩きの女の子と若い女性を笑顔で迎え入れ、女の子と同じ目線になるようしゃがみこんだ。「いらっしゃい」。マスク越しでも分かる草野さんの優しい表情に安心したのか、女の子は女性のそばを離れて草野さんに寄り添い、園内に入っていった。
マミーハウスは毎日午後2時開園。現在は0~4歳の約20人が利用し、母親は全員がクラブやスナックなど中洲の飲食店で働く女性だ。通常の保育時間は翌午前3時までで、午前6時まで延長利用できる。
草野さんは18歳から中洲のクラブで働き、26歳で自分の店を構えて女手一つで2人の子供を育てた。夜の店での勤務は短時間で収入が得られることもあり、周囲には自身と同じシングルマザーが少なくなかった。
幼少期に共働きだった両親があまり家にいなくて心細かった体験があり、子供たちが安心して過ごせる場を作って母親を支えたいと、2016年に保育園を開設した。17年には国から整備費や運営費が助成される企業主導型保育事業に採択され、保育料を抑えて中洲で働く母親を支えてきた。
新型コロナウイルスの感染拡大は、歓楽街に大きな影を落としている。
福岡県は20年春に続き21年1月も国の緊急事態宣言の対象地域に入り、宣言の延長で飲食店などへの営業時間短縮の要請が続いている。中洲では最初の宣言以降、客足が戻っておらず、収入減におびえながら子供を預けに来る女性の姿に草野さんは胸を痛めた。「困ったら言ってね」と保育料の支払いを延期するなどしてきたが、抜本的な解決策が必要だと感じ、思いついたのが就業支援だった。
「資格の取得や、正社員で昼に就業する後押しをしたい」。人材開発に取り組む企業で働く知人に声をかけると賛同してくれた。女性のキャリア支援を手がける仲間やウェブ制作に詳しい知人からも協力を得られることになり、プロジェクトを「中洲大学」と名付けた。「学歴こそ高卒や中卒とさまざまだろうが、中洲で働いてきた女性はコミュニケーション能力が高く、仕事の力は大卒に引けを取らない」。草野さんは中洲大学という名にそんな思いを込めた。
20年11月にプロジェクトの賛同者4人で初めて会議を開き▽転職▽独立・起業▽昼の副業・兼業――を支援の柱にする方針を確認した。履歴書の書き方やキャリア形成の相談に乗り、資格取得教室で勤務経験のある人の協力も得ながら、保育士など資格取得の支援にも取り組んでいくという。
2月11日には中洲大学に興味がある女性を対象にウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を使ったオンライン説明会を開き、活動を本格化できればと考えている。草野さんは言う。「子育てと仕事を両立させるのは難しいが、中洲で働く女性たちはそれをやってきた。同じ境遇の仲間で支え合いながら、社会で活躍するための自信を深めてほしい」。【中里顕】