「“親殺し”の責任でしょうか」
政治部記者がそう表現するのは自民党の野田聖子幹事長代行(60)の振る舞いだ。自民分裂選挙となった1月24日の岐阜県知事選。野田氏ら多数の国会議員が推す現職の古田肇氏が5選を果たしたが、野田氏は分裂の責任を取って県連会長を辞任した。知事選は野田氏と「岐阜のドン」猫田孝県議(80)の代理戦争と呼ばれた。猫田氏は「俺の言うことを聞かなくなった」とばかりに古田知事降ろしに動き、新顔の経産官僚を擁立。古田知事を支援した野田氏は、権勢を誇ってきた猫田氏を念頭に「長老支配の政治を変えたい」と宣戦布告していた。
野田氏にとって猫田氏は大恩人。2005年の郵政選挙で郵政民営化に反対して党公認を得られなかったが、猫田氏主導で県連は野田氏に「県連公認」を与え、当選させた。一方で、当時の小泉純一郎首相に弓を引いた責任を問われた猫田氏も離党を余儀なくされた。そんな猫田氏を野田氏は父のように慕っていた。だが、
「野田氏にとって今回の一件は次のステップに進むための親殺しだった」(前出・記者)。ステップとは、菅義偉首相の支持率低迷によって、いつ号砲が鳴ってもおかしくない「ポスト菅」レースへの参戦だ。これまでの野田氏は総裁選のたびに出馬を模索するも推薦人が集まらず断念してきた。次に向けて頼るのが二階俊博幹事長。二階氏もたびたび野田氏に「推薦人が足りない時は言ってこい」と軽口を叩いてきたが、菅氏の凋落で「二階氏が本気で野田氏に乗り換えようとしている」との臆測が広がる。自民党関係者は「二階氏にとっての気がかりは今年の衆院選。菅首相で勝てそうにないなら『初の女性宰相』の看板で野田氏のほうがベターと見ているのでは」。
「男に媚びを売る時代は私で終わらせる」
野田氏は岐阜県議を経て、1993年衆院選で初当選。県議時代には猫田氏に、国会議員になってからは野中広務元官房長官や古賀誠元幹事長ら時の実力者に可愛がられ、「爺殺し」の才覚を発揮してきた。酒席では党幹部になった今でも、率先して下ネタを連発し、男性客を困惑させる。同席した女性の議員や記者に「男に媚びを売る時代は私で終わらせる。あなたたちが偉くなった時にこんなことはやらせない」と親分風を吹かすこともあるという。
猫田氏は、二階氏と折り合いが悪い麻生太郎副総理と近い。「首相を目指す野田氏にとっては二階氏の支援が不可欠。それを得るために猫田氏を切ったのか。それとも知事選は、最大の権力闘争である総裁選の予行演習だったのか」(政治部デスク)。親殺しを果たした野田氏の次の一手は如何に。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年2月11日号)