奈良県橿原市で2019年11月、アパート火災の焼け跡から桜井市の山岡直樹さん(当時28歳)が遺体で見つかった事件で、殺人と現住建造物等放火などの罪で起訴された元会社員、竹株脩(しゅう)被告(21)の裁判員裁判が10日から始まる。毎日新聞は4日までに計5回、被告と接見。被告は「弁護人は無罪を主張する方針だが、(自身は)やったともやってないとも言うつもりはありません」と黙秘を示唆した。【林みづき、小宅洋介】
竹株被告は接見で、認否や動機に関する質問には答えなかったが、事件後、出頭するまで約3週間に及んだ逃亡生活の一端を語った。新幹線で向かった福岡でネットカフェなどに滞在した後、いったん橿原市の現場に戻り、再び福岡に行ったと証言。捜査関係者によると、竹株被告は19年12月11日夜から12日にかけて夜行バスで福岡から大阪に移動、15日朝、「金がなくなった」と橿原署に1人で出頭した。
起訴状によると、竹株被告は11月24日夜、通行人を無差別に殺害する目的で、桜井市の路上を歩いていた山岡さんの首付近になたをたたきつけて負傷させ、その後、車で橿原市内のアパートの自室に連れ去り、部屋に火を放って山岡さんを窒息死させたとされる。
竹株被告は捜査段階では容疑を認める供述をしていた。地検は竹株被告の刑事責任能力を調べるため、約4カ月間の鑑定留置を経て20年5月15日、起訴に踏み切った。
遺族「せめて被告人は真実を語って」
初公判を前に、山岡さんの父康了(やすのり)さんは「私たちの大切な直樹が無差別に命を奪われてから1年以上がたちました。ようやく裁判が始まります。私たちがどれだけ願っても直樹はもう帰ってきません。せめて被告人が真実を語ることを望みます」とのコメントを発表した。
犯行の動機解明が最大の焦点
なぜ、山岡さんが事件に巻き込まれたのか。裁判での最大の焦点は、検察側が起訴状で「無差別」と指摘した動機の解明だ。被告と被害者との接点は、いまだ明らかになっていない。被告は事前に刃物を購入し、自身の銀行口座から逃亡資金を引き出したとされ、「計画性」の有無も焦点だ。一方、検察が被告を鑑定留置した経緯もあり、法廷では責任能力の有無が争われる可能性もある。裁判所がこうした点をどう認定し、真実を知りたいと願う遺族の思いに応えるのか、注目される。【小宅洋介】
「起訴内容、何とも思わなかった」 竹株被告との主な一問一答
竹株被告と記者の主なやりとりは次の通り。
――事件のことについて思い出したり、考えたりするか
◆うーん、ときどきですね。
――起訴状は読んだのか、起訴内容についてどう思うか
◆はい、一応(読みました)。特に何とも思わなかった。
――起訴内容は認めるか
◆今は答えるつもりはないです。裁判の時には言おうと思っています(1月28日)。やってないって言うつもりがないので。でも、やったって言うつもりもありません(2月4日)。
――黙秘するつもりなのか
◆はい。
――弁護人の方針を聞いているか
◆無罪を主張する方針だと聞きました。
――起訴状にあるように「無差別」だったのか
◆今は答えるつもりはありません。
――「別人として生きたい」「生まれ変わりたい」などと考え、被害者を身代わりに殺害したのではないか
◆いや、それは全然違いますね。
――犯行後、福岡などへ約20日間逃げたのは事実か
◆はい。近鉄で京都に出て、新幹線で博多へ行きました。(福岡では)ぼーっとしてました。2、3週間たって1回、新幹線で奈良に帰ってきました。
――何のために戻ったのか
◆いろいろです。一応、(部屋を)見に来ました。
――その後はどうしたのか
◆福岡に戻りました。たまに散歩に行ったり。1回歩いて佐賀の方まで行きました。(奈良に)2回目に帰ってきたときは、新幹線に乗るお金が無かったので、夜行バスに乗りました。(警察に出頭するまでは)2、3日ぐらい。
――罪の意識や後悔はないか。被害者や遺族への思いは
◆答えるつもりはありません。
――将来どうなりたいか
◆(何もやりたいことは)ないです。