与党からチクリ「ワクチン後進国」 河野担当相は陳謝

国内における新型コロナウイルスのワクチン接種が欧米諸国に比べて遅れていることについて、8日の衆院予算委員会で公明党の桝屋敬悟議員(69)が「ワクチンでは日本は後進国になってしまった」と指摘する一幕があった。与党議員からの直言に菅義偉首相(72)は従来の答弁を踏襲。ワクチン担当の河野太郎行政改革担当相(58)は陳謝した。先進国の中で日本の接種開始時期の遅れは際立っており、東京五輪開催を控え、国際的信用低下の懸念も出ている。
ワクチンの質問に移ると桝屋氏の声は大きくなった。「コロナ禍の収束に多くの国民は確たる道筋を求めている。ワクチンの役割は極めて大きい」。続けて「全国的な接種体制の整備が急務だが、いつ入ってくるのか、スタート時点が明確でない、という声が大変ある。今やワクチンに関して日本は後進国になってしまったと言われている」と指摘した。
与党議員からのまさかの直言に、菅首相は「有効性や安全性を最終確認した上で2月中旬に接種をスタートする予定だ」と答弁。具体的な日付を挙げず「予定」とする従来の説明を繰り返した。一方で、担当相の河野氏は「国民の皆様や自治体に確固たる話ができず申し訳なく思っている」と陳謝した。
世界的なワクチン争奪戦が繰り広げられる中で「先進国クラブ」と呼ばれる経済協力開発機構(OECD)加盟国37か国のうち、接種が始まっていないのは日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、コロンビアの5か国にとどまっている。うちオセアニア2か国は感染の抑え込みに成功したと評価されており、国民に強い切迫感はない。
東京五輪開催も控える中、感染者数が40万人を超える中で日本の遅れは際立ち、国際的な信用低下を招く恐れもある。接種開始が遅れている理由について、菅首相は桝屋氏への答弁で「いろんなところで言われますけど、感染者数が欧米より1ケタ以上少なく、治験での発症者数が集まらず結果が出るまで時間を要する。また、ワクチン(の効果)は人種差が想定されるため、日本人を対象にした一定の治験を行う必要がある」と説明した。
米ファイザーのワクチンは12日の厚生労働省専門部会で妥当と判断されれば、厚労相が15日に正式承認し、17日にも医療従事者への先行接種が開始される予定だ。4月以降に65歳以上の高齢者に対象を拡大し、その後、基礎疾患がある人が対象になる。一般国民は未定だが、5~6月以降にズレ込むとも指摘されている。