睡眠剤混入、小林化工に国内最長116日間の業務停止命令 福井県

福井県あわら市の製薬会社「小林化工」が製造する爪水虫などの皮膚治療薬に睡眠導入剤の成分が混入した問題で、福井県は9日、医薬品医療機器(薬機)法違反に基づき、県の処分基準で上限となる116日間(2月10日~6月5日)の業務停止命令を同社に出した。少なくとも2005年ごろから同社が扱う大半の製品で、行政の立ち入り検査をごまかすために虚偽の製造記録などを作成。40年以上前から必要な品質検査をせずに結果を捏造(ねつぞう)していたことも新たに明らかになった。
県は、経営陣がこうした法令違反を把握しながら長年にわたって放置していたと判断し、国内で過去最長となる処分を出した。
問題の薬は経口抗真菌剤イトラコナゾール錠50「MEEK」で、同社が20年12月4日から自主回収。意識消失や記憶喪失などの健康被害の報告は8日時点で27都道府県の計239人に上り、うち22人が服用後の意識障害による交通事故を起こすなどした。2人が死亡したが「因果関係は不明」としている。
医薬品メーカーは薬機法などに基づき、国の承認書に従って製造する必要があるが、県などの調査によると、少なくとも05年ごろから、同社の約500製品のうち約390製品で承認外の手順書が存在したり、行政の立ち入り検査をごまかすために虚偽の製造記録を作ったりしていた。約180製品は、製造過程で目減りした原料を勝手につぎ足すなど厚生労働省が承認していない手順で製造されていた。
1970年代後半からは必要とされる一部の品質検査を実施せず、試験結果も捏造していた。県は、小林広幸社長ら経営陣がこれらの法令違反を把握しながら長年にわたって改善策を講じなかったことが最大の問題だと結論付けた。
今回の問題では、目減りした原料をつぎ足す際に睡眠導入剤「リルマザホン塩酸塩水和物」が誤投入された。つぎ足しは認められていない。2人1組で行わなければならない原料の取り出しについても、人手不足を理由に作業員1人で行っていた。品質試験で異物混入の可能性を示すデータが検出されていたが、内容を調査しないまま出荷するなど多数の法令違反が確認された。
県は「医薬品の製造企業として当然に有すべき、法令順守への意識が欠如している」として、過去最長の業務停止が必要と判断した。これまでの最長は16年の「化学及(および)血清療法研究所」(熊本市)に対する110日間。また、県は小林化工に業務改善命令も出した。今後、同社から提出される業務改善計画の内容を考慮し、業務の再開時期を検討する。【岩間理紀、大原翔】