東京都の小池知事は五輪組織委員会の森会長の辞意について、11日のぶら下がり取材では「携帯電話にご連絡をいただきましたが、内容は申し上げません」と言葉少なだったが、“天敵”を駆逐して内心はニンマリだろう。
女性蔑視発言を謝罪するはずの会見で悪態をついた森会長の外堀は、じわじわと埋められていった。ボランティアや聖火ランナーの辞退が続出し、IOC(国際オリンピック委員会)も「極めて不適切」と手のひら返し。そこへダメ押ししたのが小池知事だった。17日に予定されているIOC、政府、都、組織委の4者トップ会談をめぐって10日、「ポジティブな発信にならないと思うので、私は出席することはないと思う」と切り捨てたのだ。
小池知事は当初、森会長の失言を「話が長いのは人による」と静観の構えだったが、半日後に「重要な時期に困惑している」と言い、5日には「絶句した。あってはならない発言」と非難のトーンを次第にアップ。機を見るに敏の本領を発揮した計算ずくの発言だったという。
「五輪開催モードにスイッチが入った知事は当初、騒ぎ立てない方がいいと大人の対応をしたのですが、その結果、現場は大混乱。都庁に抗議が殺到し、ボランティア辞退の問い合わせはやまず、スポンサーも怒り出して収拾がつかず、ネガティブ情報は山積み。森会長が退かなければ開催が遠のくと判断し、言葉を選びながら追い詰める方針に転換したのです」(都幹部)
その結果が「出席しない」発言だ。直接的に「辞任」に言及することなく、それでも、「森会長である限り、4者会談には出席できない」と暗に森会長に退場を迫ったのだ。
■小池知事の唯一の誤算は会長の後任人事
2人の因縁は衆院議員時代の小池氏が籍を置いた清和会までさかのぼる。派閥のボスの顔に何度も泥を塗った小池氏を森氏は毛嫌い。小池氏が都知事就任後も、競技会場の移転などをめぐってバトルを繰り広げた。
「知事の唯一の誤算は会長の後任人事。森会長との間に入り、気遣ってくれる組織委副会長の遠藤元五輪相の昇格を期待していたようです」(前出の都幹部)
森会長は手記「遺書」に〈私は今、二つの恐怖と闘っているようなものです。一つはガンであり、一つは小池都知事の刃です〉などと、小池知事への恨みつらみを書き連ねていた。先見の明を生かせなかったのは老いからか。