五輪組織委会長の後任問題を巡るドタバタ劇は17日も続いた。複数の候補者が乱立する中で、本命視されながら就任に難色を示していたとされる橋本聖子五輪相が、最後の最後に就任要請され、受諾に至った。関係者の思惑が錯綜(さくそう)し、結局は透明性とは名ばかりの密室人事が、またも繰り返された。
16日の第1回検討委の時点では、後任候補について「具体名は出ていない」とされていたが、当然これは建前。小谷実可子氏のようなフレッシュな名前も浮上する一方で「武藤事務総長主導で、山下JOC会長の兼任案を推進しようとしたと聞いている」と関係者は証言する。しかし、フタを開けてみれば急転直下で橋本氏への一本化。12日の川淵三郎氏のケース同様、「今度も政府が山下案をひっくり返したのでは」という見方もある。
12日のドタバタは、森会長が自宅で就任要請するなどの密室劇に、官邸が不満を募らせた末のものだった。「女性」「若さ」を後任に求める菅義偉首相の当初からの意中の人物が橋本氏であり、今回も“助言”の可能性は否定できない。
山下案がそもそも波乱含みだった。JOCと組織委の会長では全く性質が異なる。アスリートのボスとしてはにらみが利いても、組織委の長としての交渉能力、発信力、調整力には疑問符がついていた。
検討委に名を連ねる山下氏が候補となること自体、一般企業などの常識に照らし合わせれば、考えにくい事態。複数の組織委関係者が「信じられない」と絶句していた。森会長の女性蔑視(べっし)発言をその場で制止も出来ず、「不適切」と言いつつも続投を支持。一貫性のない行動で批判も浴びた。森会長からの変化をアピールするには、物足りないと言わざるを得ない。JOC内部からも反対意見が続出していたという。
今回の手続きの流れを見ると、8人からなる検討委が事実上の意思決定機関。理事会は単なる事後承諾の場だった。透明性、公平性をうたいながら、検討委は2度とも完全に非公開。メンバーの名前もバレバレながら一応は非公表だった。密室で一本化が進められ、密室で覆った。
メンバー外の理事からは「複数候補を出した上で、採決するなどが普通の流れ。検討委が全てを決めてしまっては35人いる理事は何の意味があるのか」と異論が噴出していた。とりわけ山下案がそのまま通っていれば、理事会は紛糾した可能性が高い。
ひとまず“元サヤ”状態で橋本五輪相への要請でまとまったが、その裏ではさまざまな思惑が渦巻いていた。
◆3氏の強みと弱み
▼橋本聖子五輪相(56)=政府が支持?=
【強】夏冬7度の五輪出場、女性
【弱】大臣の後任問題、過去のセクハラ騒動
▼小谷実可子組織委SD(54)=東京都が支持?=
【強】銅メダリスト、女性、若さ、語学力
【弱】組織運営の経験
▼山下泰裕JOC会長(63)=組織委が支持?=
【強】金メダリスト、IOC委員
【弱】検討委メンバーのため透明性に疑問
【候補者検討委員会の経過】
▼2月12日 組織委が後任会長の「候補者検討委員会」を立ち上げる。
▼16日午後1時30分 初会合が都内ホテルで。検討委は御手洗冨士夫名誉会長を委員長に、元アスリートを中心に男女4人ずつ8人で構成。
▼17日午前10時 第2回会合が都内ホテルで。後任候補は橋本聖子氏に一本化。就任を要請することに。
▼18日 第3回会合で橋本氏の意向が報告される見通し。組織委の定款では会長に就任できるのは理事のみのため、午後の理事会で橋本氏を新たな理事候補に決める。その後、評議員会で理事に選任。夕方に再び理事会を開き、理事の互選で正式に会長に選出。