「日本の医療体制は大規模感染症に適していない」東大教授が指摘していた“第3波の混乱”

首都圏では緊急事態宣言が2週間、延長されようとしている。
だが当然のことながら、緊急事態宣言を延長しようが、解除しようが、新型コロナウイルスは消えるわけではない。それは私たちがすでに経験していることだ。
第3波の混乱を予見していた人物
2020年に1回目の緊急事態宣言が落ち着いたあと、街には人が戻り、夏には第2波が発生した。
その第2波が一段落すると、ふたたび街には人が戻り、秋から政府は「GoToキャンペーン」を始め、そして冬の訪れとともに第3波が襲来した。
その第3波に襲われた日本では、「このままでは医療体制が崩壊する」「コロナ病床が逼迫している」という声が飛びかうことになった。
世界的にも医療資源が潤沢な日本で、なぜこうした事態に陥ったのか。
じつは、第3波の混乱を予見していた人物がいる。東京大学の米村滋人教授だ。
「感染者が増加していけば大変な事態に陥る」
第2波の感染者数が減少しつつあった2020年8月、米村教授はシンポジウムを主催して、「日本の医療体制は大規模感染症に適したものになっていない。今後、感染者が増加していけば大変な事態に陥る」と警告を発した。
その指摘が正鵠を射ていたことは言うまでもないが、当時はメディアも含め、社会の関心は集まらなかったという。
米村教授は東京大学医学部に在学中、司法試験に合格したという経歴の持ち主だ。医師免許も持っているので、現在は東京大学法学部で民法と医事法の研究・講義をしながら、週に1回、病院で診察している。
医療現場を肌身で知る上に、医療に関する法制度の専門家である米村教授だからこそ、日本の医療が抱える構造的な問題が予見できたのだ。
日本の「医療崩壊」の正体とは?
月刊「文藝春秋」3月号では、この米村教授と、元厚生労働大臣・元東京都知事の舛添要一氏、元厚労官僚で現在は地域医療に取り組む宮田俊男医師が、医師会などが声高に叫ぶ「医療崩壊」の正体と、そうした事態を招いた日本の医療が抱える問題点を議論した。
舛添氏は厚生労働大臣だった2009年、新型インフルエンザの対応にあたった経験を持つ。
その際、法制度などの不備などを痛感した舛添氏は、民主党政権へ法整備を言い残した。そうして作られたのが「新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)」だ。
それが2020年3月に改正されて、政府の新型コロナ対策の法的根拠となった。
また、都知事を経験しているので、その強大な権力を用いれば何ができるかを熟知している。コロナ対策の司令塔たるべき知事の権限についても、実感的に語れるのだ。
一方、宮田医師の経歴もユニークだ。人工心臓の研究者から医師へ転身。大学病院で心臓外科医として活躍していたが、医療政策に取り組むために厚生労働省へ入った。退官後は東京都内で開業医として在宅医療やオンライン診療に取り組むかたわら、早稲田大学大学院で医療政策を教えている。
さまざまなバックグラウンドと経験を持つ3人が集結し、なぜ日本の医療が「逼迫」したのか、その背景にある日本の医療が抱えている問題は何か、それを生む医療、政治、法律の欠陥は何か、こうした点について議論が展開された。
「文藝春秋」3月号および「文藝春秋digital」に掲載されている座談会「 『医療逼迫』犯人は誰だ 」で3人が披露した卓見は、第3波が治まりつつある今、政治、行政、医師会が何をすべきかを教えてくれる。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2021年3月号)